高山医師の辞任で医療界、県政に不信感 中部病院クラスターの公表遅れは「県に責任」


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県議会文教厚生委員会で挙手する県立中部病院の高山義浩医師(中央)=5日、県議会

 県立中部病院で起きた新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)の公表・会見が遅れた問題を巡り、県の感染症対策に貢献してきた高山義浩医師(県立中部病院)が5日、県の専門家会議委員辞任を表明した。県立病院でのクラスター公表の在り方を巡り、自身の指摘が大きく注目された責任を取った形だが、医療関係者は「行政の問題は専門家でなく、県が責任を取るべき」と、県政への不信感を強めている。問題の真相究明を進める県議会文教厚生委員会には8日、玉城デニー知事が出席する。県トップの説明責任に注目が集まる。

 5日の文教厚生委員会に招致された高山氏は、中部病院の会見を巡り県病院事業局に指摘した内容について、クラスターの「公表基準が満たされてない」と指摘しただけではなく「保健医療部が記者会見するべきで、病院としてウェブサイトで公表するべきとも伝えた」と答えた。さらに、「この部分(公表基準)だけ切り取られたのは若干、なんらかの意図があると不安になる」と、病院事業局の対応を疑問視していた。

 高山氏は専門家会議の委員だけでなく、県の感染症対策課主幹や県疫学統計解析委員会委員などの肩書を持つ。知事会見にも同席し、県の感染症対策を支えてきた。医療現場に率先して出向くなどフットワークの軽さに評価も高く、医療関係者は「代えがたい存在。県は辞める事を止められなかったのか」と憤った。

 別の医療関係者は「高山医師が県に指摘したとは言え、最終的には県が責任を持つ話だ。県の対応のまずさが現場を混乱させている」といらだちを隠さなかった。
 (嘉陽拓也)