保育士「続けられない」進まぬ待遇改善、サービス残業…<県都のみらい>


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七夕飾りを作る園児と保育園職員。保育士の確保や処遇改善が早急に求められている=6日、那覇市内

 「3人目の子どもを育てるなら、保育士は続けられない」。那覇市の女性(27)は保育士として4年間働いた後に辞職し、4月から市内の放課後児童デイサービス事業所に転職した。保育士時代の給与は手取りで月15万円程度。転職後は4~5万円増えた。夫(32)は清掃会社に勤め、長女(5)と長男(2)を育てる。そろそろ3人目の子も望む。だが、消耗品の紙オムツは一袋1000円前後。成長に合わせて頻繁に買い換える衣服代も生活を圧迫する。将来の学費も不安だ。

 保育園の業務を自宅に持ち帰ることは日常茶飯事でサービス残業も多かった。やりがいも感じたが、将来を見据えて退職を選んだ。

 那覇市は待機児童ゼロを掲げ、公立幼稚園を保育園と一体化した認定こども園にするなどして、施設数と定員数を増やした。待機児童数がピークだった2016年度は86施設、定員8050人で、21年度は157施設、定員1万2234人になった。4月1日時点の待機児童数は前年比116人減の37人。保育士確保や待遇改善のため、新卒や長年勤続する保育士に祝い金を給付する政策も進めた。

 一方、女性は「一時的な給付では継続的に働けない」と指摘した。待遇の悪さを理由に、出産などを機に離職する同僚もいた。「毎月の給料が上がらないと、厳しい生活は変わらない。保育士の待遇が良くなったとは感じなかった」

那覇市議選では、立候補者63人のうち23人が、特に力を入れたい政策に「子育て支援・待機児童解消」を掲げる。市は「いつでも希望の園に入園できる」ことを目指す。

 だが、子どもの途中入所に合わせて職員を募集しても、すぐには担い手が見つからないのが実情だ。おおな愛児保育園園長で県私立保育園連盟の那覇ブロック長の上原直さん(50)は、実現には「各園が自費で保育士を十分確保し、余力を残しておく必要がある」と指摘した。

 国は保育士配置の最低基準を保育士1人に対し0歳児3人、1歳児6人、3歳児20人などと定める。だが実際多くの園では最低基準を上回る保育士を自費で配置する。国は12年、地方自治体の裁量で保育士の配置基準を改善できるようにした。国や自治体から認可保育園に給付される補助金は園児数によって決まる。県私立保育園連盟は市などに基準見直しを求めており、上原さんは「質の高い保育のため基準以上の保育士を配置するが、人件費が運営を圧迫し厳しい。悪循環だ」と訴えた。

 市内のある保育施設で今年1月、新型コロナウイルスの陽性者が出た。施設は職員や園児約60人にPCR検査を行い、費用は35万円に上った。5月からの緊急事態宣言中、市内の保育施設は原則開園。保育士などエッセンシャルワーカーが社会基盤を支えている。上原さんは「施設でクラスターを起こさないためにも、検査への補助もあってほしい」と市政に要望した。

(嶋岡すみれ、吉田早希)