【深掘り】与党内でも評価が分かれる知事の対応 中部病院クラスター公表遅れ 


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県立中部病院で発生したクラスターの公表・会見が遅れた問題を巡り開かれた文教厚生委員会=8日午後、県議会

 沖縄県立中部病院での新型コロナウイルス感染症クラスター(感染者集団)発生について県が公表していなかった問題は、玉城デニー知事らが県議会文教厚生委員会に招かれる事態に発展した。委員会で玉城知事は「決して隠蔽(いんぺい)という考えはない」と説明したが、実態解明は不十分で、関係者間で認識の違いも生じている。県に対して原因を明らかにして説明責任を果たすよう求める決議を行うことで与野党が一致した。

 委員会は通例、部局長以下が対応するため、常任委員会に知事が出席するのは極めて異例だ。与党幹部は「常任委に知事が呼ばれること自体が大失態だ」と指摘した。

 委員会の質疑で、仲里全孝氏(沖縄・自民)が知事の責任を問う質問を12回にわたって重ねた。責任の取り方を尋ねる野党に対し、玉城知事は再発防止策を繰り返し、議論はかみ合わないまま終始した。

 追及が不発に終わった感もあるが、自民県議の1人は「想定内だ。(質疑で)知事が保身に走っている印象が強まったのではないか」と強調。「自ら減給などを表明していれば、あそこまで責任の取り方を追及されることはなかった。県民が納得できるか」と批判を強める。

 一方、三役の関与について新たな事実を引き出せなかったとし、自民党内からも厳しい意見が上がった。党関係者は「せっかくの好機に、(野党が)不毛な責任論に終始した。もったいない。疑念は払しょくされていない」と語った。

 8日の委員会について、与党内でも評価は分かれる。知事に近い与党県議は「議論が目的ではなく、追及される知事の姿をさらすことが野党の狙いだろう」と指摘。「知事も非を認めて謝罪しているのだから、今回を『けじめ』として県民が一緒に前に進まないといけない」と述べた。

 別の与党県議は「今回の答弁は、県民の目に保身としか映らない。与党だからとかばっている場合ではなく、与野党にかかわらず議会として説明を求めていく必要がある」と強調した。

 (明真南斗、大嶺雅俊、梅田正覚)