県都のみらい(下)那覇市議選7・11 那覇軍港 移設「那覇も当事者」 市民、議論活性化望む


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浦添市への移設が計画されている米軍那覇軍港=2日、那覇市

 「市民として知らんぷりはできない」。那覇市に住む40代男性は米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添移設問題の行方に注目している。市民団体「浦添西海岸の未来を考える会」に参加し、那覇市議選の立候補予定者に対する軍港問題のアンケートを実施した。

 6月当時の立候補予定者は65人で、このうち回答者は40人。回答率61・5%に対して、男性は「ショックだ。今、軍港は那覇にある。当事者のはずだが」と疑問を抱く。那覇軍港の早期返還を問う設問では、37・5%(15人)が「浦添移設容認」と答え、32・5%(13人)が「無条件返還を求める」と回答した。

 那覇軍港は1974年に移設条件付きの返還が日米間で合意された。2001年、儀間光男浦添市長(当時)が移設受け入れを表明した。近年は軍港代替施設の位置を巡って関係自治体の意見が対立していたが、20年8月に松本哲治浦添市長が県や那覇市などの推す案を受け入れた。21年2月の浦添市長選でも浦添移設の是非が争点になり、移設を容認する松本氏が再選した。

 琉球新報が那覇市議選の候補者63人に実施したアンケートでは、浦添移設を進めるべきだとの回答者が34人、無条件返還を求めると回答したのは15人だった。一方、力を入れたい政策を三つまで答える設問で、軍港問題を選択した候補者は1人だけだった。

 候補者が配布するビラでも軍港問題に触れることは少ない。無条件返還や再検討を求める声は与党系候補者に多いが、城間幹子市長は「移設を前提とした返還が実現性が高い」との立場で、ねじれも生じている。

 市議選の状況について、那覇軍港などの地権者でつくる那覇軍用地等地主会の我那覇祥義会長は「返還がまだ先のことだからではないか」と見る。日米両政府は返還時期について28年度またはその後としているが、移設作業の遅れから2030年代になる見通しだ。

 我那覇会長らの関心は、移設・返還の手法より軍港の固定資産税問題にある。地主会は固定資産税が「過大だ」と市に訴えている。跡地利用計画の策定についても、地主会と市で勉強会を重ねているが「固定資産税の問題が解決しないと先に進めない」と強調した。

 「浦添西海岸の未来を考える会」のアンケートに関わった男性も元々は政治に興味がなかった。選挙があっても投票には行かず、「自分事」とは捉えられなかった。転機は14年。翁長雄志知事の誕生をきっかけに、政治に関心を持った。

 市議選の候補者に対して、男性は「軍港について賛否について言及してほしいし、那覇市民の意見も聞いてほしい」と望む。かつての自身への反省も込め、男性は1票に思いを託す。

 (伊佐尚記、照屋大哲)