【沖縄】光合成をしない植物として世界最大級のタカツルランについて、沖縄市立郷土博物館(久場健史館長)と佐賀大学などが共同研究した論文が4月、生態学を扱う学際的なオンラインジャーナルに掲載された。共同研究で、寿命が栄養源の菌とつるが巻き付く古木に関係することなどが分かった。
タカツルランは国のレッドリストで絶滅危惧種IAに指定されている希少種。佐賀大を中心とした共同調査研究チームには、同市博物館の刀禰(とね)浩一学芸員(32)のほか、屋久島で環境保全活動を行うチーム、国立科学博物館が参加した。自然史を専門とする刀禰学芸員らは、2013年から15年にかけてのフィールドワーク中に同市の森でタカツルランが多数自生しているのを確認した。
ほとんどの植物は光合成で生体を維持するが、タカツルランは菌根類(カビやキノコの仲間)に栄養の供給を完全に依存する「菌従属栄養植物」。
植物なのに緑の葉を持たず菌類を食べ、イタジイなどの枯れ木に巻き付いて地上茎が10メートル以上にも伸びる。花は3センチ前後、淡黄褐色で唇弁は縁が内側に巻き込んで筒状。花期は初夏から1カ月程度という。
刀禰学芸員は「巻き付いている古木が分解され尽くすと共生する菌の栄養源が消滅するため寿命が短いことなど、これまで知られていなかった不思議な生態が分かってきた。今後も継続調査を行い、謎の多いタカツルランの生態解明を行うとともに研究成果を保全に生かしたい」と強調した。
今回の合同研究は実績のある佐賀大に同博物館が打診して実現、5年余、調査研究を行ってきた。
タカツルランは東南アジアに広く分布し、琉球列島は分布の北限に当たる、世界自然遺産の登録が見込まれるやんばる地域でも報告例があるが、刀禰学芸員は「当地での数の多さに興奮が抑え切れなかった」と述懐した。
(岸本健通信員)