進まない基地内戦跡調査 情報がある地点で限定的に実施「今分かっている数倍ある」


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米海兵隊の調査で確認された米軍キャンプ・ハンセン内の恩納岳の戦跡。斜面に掘り込まれた横穴で、日本軍が利用したとみられる=2020年3月18日(米海兵隊提供)

 県内の米軍基地内には、未調査の戦争遺跡や戦没者遺骨が一定数存在しているとみられるが、立ち入り調査は事前情報に基づく限定的な形でしか実施できず、課題となっている。県内自治体の担当者は、現時点で把握されている基地内にある戦跡は一部にとどまるとして、未確認戦跡を発掘するためにもより広い地域を調査できる仕組みや環境を整える必要があると指摘する。

 県や市町村が文化財調査で米軍基地内へ立ち入るには、沖縄防衛局を通して米軍へ申請する方法に加え、米軍へ直接申請する方法がある。

 県や市町村が要請した際、事前情報がある場所に限定せず、より広い地域の調査ができるかどうかについて、防衛局は「地元自治体から要望がある場合は、米側と適切に調整する」としている。

 一方、県立埋蔵文化財センター在籍時に県内全域の戦争遺跡に携わった県立博物館・美術館学芸員の山本正昭さんは、米軍基地内の戦跡について「今、分かっている数倍あるのではないか。事前に得た情報を基に、米軍へ『この場所を調査したい』と交渉するしかなく限界がある」と話す。

 基地内調査の現状について山本さんは「今は点としての調査しかできない」とし、「理想としては面やエリアとしての調査ができればと思う。そうすることで把握できていない戦争遺跡が見つかってくるだろう」と指摘した。