「従業員守れない」休業破りに協力店「不公平」<深まる苦悩 沖縄経済>2


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人の往来が減り、客引きの姿が目立つ那覇市松山の繁華街=13日午後9時すぎ、那覇市の国道58号松山交差点

 午後9時半過ぎ、那覇市内の繁華街。道行く人はまばらだが、酔客らしき人の笑い声もどこからか聞こえてくる。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言によって酒類提供の終日停止が求められる中、通りにはシャッターを半分下ろしながらひっそりと客を入れる店、行政からの過料を覚悟で酒を提供する店もある。営業する店をのぞいてみると、ほとんどが常連客や観光客でごった返していた。

 4人の従業員を抱える個人経営の居酒屋店主は「最初は県の要請に応じていたが、協力金だけでは店や従業員を守れない」とつぶやき、7月に入り通常営業に踏み切ったことを明かした。酒類を出さない期間の売り上げは8割減だったといい、後ろめたさはあったが「もう限界」だった。

 11日で終了する予定だった緊急事態宣言が再延長となる中で、別の居酒屋も「自粛疲れと経済的理由」により、12日から通常営業を再開した。

 この間、県の休業要請に応じず通常営業を続ける店がどこも連日にぎわっている状況を見てきた。店主は「県の見回りや過料制度もいい加減。ルールを守った方が損するのは不公平だ」と憤りを隠さない。一帯は観光客も多く、「店にとって夏場が稼ぎ時。協力金の振り込みも遅れているし、このままでは通常営業せざるを得ない店も増えるだろう」と推測した。

 陽性者の感染経路が追えていないケースも多い中で、飲食店だけが“集中砲火”を浴びる事態に疑問を呈す識者もいる。

 群星沖縄臨床研修センターの徳田安春センター長は「飲食店が感染拡大の主要因と断定するには、データ的証拠に乏しい」と指摘し、空港・港湾での水際対策の不備やワクチン接種の遅れも感染拡大につながっていると分析する。

 自粛要請に応じない店舗が増えて緊急事態宣言延長の効果が問われることに対しては、「飲食店への補償が不十分だからだ。一義的な責任は政府にある」と言い切った。

 店舗に酒類を納入する卸販売業者も、飲食店やスナック、バーの休業が続く中で苦境にあえいでいる。高江洲酒販(宜野湾市)の高江洲義成代表は、酒類の禁止で感染者数が減るのか疑問を呈し「明確な根拠を示してもらわないと納得できない」と吐露した。

 昨年から繰り返される酒類提供の制限で、酒販店の売り上げは大幅に落ちた。最高30万円の月次支援金は「ありがたいが、これまでの損失分の補填(ほてん)には到底ならない」と肩を落とす。

 高江洲さんは、県卸売酒販売組合の業務用卸売流通対策委員長も務める。西村康稔経済再生担当相が、酒類提供を続ける飲食店との取引を停止するよう酒類販売事業者に求めたことで政府への不信感が強まったとし、「撤回は当然だ」と語気を強めた。

(当銘千絵)