【記者解説】普天間PFAS放出なぜ基地外へ 米軍、金銭的都合を優先


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米軍の汚染水放出計画の説明を受けるため普天間飛行場内に入る宜野湾市職員が乗った黒の車両=13日午前9時47分、宜野湾市大山

 米軍が普天間飛行場内から有機フッ素化合物(PFAS)を含む汚染水を基地外の公共下水施設へ放出する意向を示している理由が経費だったことが明らかになった。県民の健康に関わる問題にもかかわらず、軍自らの金銭的都合を優先していることになる。

 国や県、宜野湾市を基地内に招待してPFAS除去装置を見せるなど、自らの正当性を証明しようとしている。だが、これまでもPFASを流し続けて基地周辺を汚染し、その責任を取っていない米軍に正確な運用ができるのかは疑わしい。今回の処理装置は、在日米軍施設での環境保全を定めた日本環境管理基準(JEGS)に準拠していると言うが、説得力に欠ける。

 米軍は従来通りの焼却処理では経費だけでなく、時間が掛かるとも強調。うるま市の米陸軍貯油施設からのPFAS流出事故を例に挙げ、認めなければ台風の時期に同様の事が起こると示唆している。宜野湾市の和田敬悟副市長は報道陣から、米軍にとって一番の理由は経費かと問われ「そう受け止めた」と話した。

 今回の基地内立ち入りは米軍が呼び掛けて実現した。安全性を示して地元を説得する狙いがある。これまで河川や湧き水の蓄積汚染について、県が基地内立ち入りを求めても断ってきた姿勢とは対照的だ。京都大の調査では、宜野湾市大山などの住民はPFOSやPFHxSの血中濃度が全国と比べ高いことが分かっている。

 従来通り、許可を受けた県外の業者に委託すれば、確実に県内からPFASを撤去できる。自前で処理すれば、不確定要素が加わって人為ミスもあり得る。米軍は、2020年4月には格納庫そばでバーベキューをして消火装置を稼働させ、使用方法が周知されておらずに被害を拡大させた「実績」がある。

 沖縄防衛局は「適切に措置されるよう努める」との方針だが、県や宜野湾市が強い姿勢で中止を求めるかどうかが焦点だ。
 (明真南斗)