最低賃金28円引き上げに沖縄県内は?「働く人に勇気」「人件費アップ厳しい」


社会
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 中央最低賃金審議会の小委員会は14日、2021年度の最低賃金の改定目安として、全国一律で28円とした。県内の労働者からは歓迎の声が上がる一方、経営者側からは「厳しい」などの声も聞こえ、意見が分かれた。

 連合沖縄の砂川安弘事務局長は「県経済が厳しい中、28円の引き上げは現在最低賃金水準で働いている人たちには勇気を与えた」と歓迎した。「2020年に目標としていた時給800円は、1年遅れてようやく通過する見通しとなった。今後さらなる上積みができるよう、沖縄地方最低賃金審議会で働きかけていきたい」と強調した。

 県内離島で働く非正規雇用の男性は「大幅アップはうれしいが、沖縄は物価が高く、例え時給千円でも生活が楽にはならない。まじめに働く人がちゃんと生きていける社会にしてほしい」と切に願った。

 一方で経営者からはコロナ禍を踏まえ、大幅上昇を危ぶむ声もあった。県商工会連合会の米須義明会長は「今の状況で急な人件費アップは厳しい」と吐露する。「中小企業は生産性の向上もなかなか追いついていない。デフレで物価が下がる中、人件費が上がるとバランスが取れない」と話した。

 「経営のことを考えていないのではないか」。県中小企業家同友会の喜納朝勝代表理事も驚きを隠さない。「(人件費増に)耐えられない企業が出るかもしれない。労働者を守るためにも、企業の存続が重要だ」と述べ、県内での審議に慎重さを求めた。

 県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長は、「従業員にとっては歓迎すべき値上げ幅で、意欲向上にもつながるはずだ」と一定の評価を示す。一方、飲食業は新型コロナに加え材料費の値上がりで経営がひっ迫していると指摘。「値上げに踏み切る店も出てくる可能性がある」と推測した。