迫られる経営見直し…支援機関相談で改善例も<深まる苦悩 沖縄経済>5


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県よろず支援拠点で経営のアドバイスを受ける事業者(右)=14日、那覇市小禄の沖縄産業支援センター

 コロナ禍が長期化する中で、中小企業を対象とした実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が一部で始まり、事業者は資金繰り対策や経営見直しを一層迫られている。一方、支援機関への相談を通して経営改善した例もあり、金融機関も含めた事業者への情報提供や連携体制の構築が、苦境を乗り切る鍵になりそうだ。

 コロナによる先行きの不透明さから、沖縄銀行(山城正保頭取)では、昨年3月ごろから従来の融資に関する返済計画の見直しに応じた。実質無担保・無利子の「ゼロゼロ融資」を実行するなどし、事業者らの資金繰りや生活を支える。

 いまだコロナは収束が見えず、沖銀は今年も顧客に応じた柔軟姿勢をとる。6月末までに返済を迎えた事業者らの5割が、新たに返済計画を見直した。ただ、残る半数の中には、新規で申し込んだ事業者もおり、計画を見直す案件が潜んでいないかを懸念している。

 沖銀の又吉司法人事業部長は「事業者一人一人に寄り添わなければ、県経済の回復にもつながらない」と危機感を募らせる。コロナ相談窓口を全店に設置しているが、さらに周知を徹底して活用を求める。

 「団体客がキャンセルした、資金繰りが厳しい」「休業要請の影響で売り上げが激減した」。中小企業や小規模事業者をサポートする「県よろず支援拠点」では、連日多くの相談が寄せられている。

 2020年度の相談件数は、前年比1.5倍となる1万471件に上った。公的支援施策に関する相談は同5倍の2133件、資金繰り相談も同2.3倍の903件と大幅に増えた。

 宣言延長による事業者の資金繰りについて、よろずの金城力サブチーフコーディネーターは「特に観光関連業は月次支援金程度しか施策がない状況だ。大変苦しんでいる」と指摘する。「店舗の整理や物件売却で手持ち資金を得られるケースはわずか。借り入れを提案するにしても返済への展望が描けずにいる場合もある」とおもんぱかる。

 こうした中、那覇市の国際通りに面する土産品店「黒糖屋」は、よろずの支援を得て再建に着手し、一定の成果を上げている。

 80~100種類の黒糖商品を取り扱う同店は訪日外国人観光客の人気を集めていた。しかし、20年はコロナの影響により、前年から最大7割ほど売り上げが落ち込んだ。

 実店舗が休業状態だったこともあり、20年5月ごろからECサイトを強化してSNSによる情報発信にも注力。今年初めには成果が表れ始め、コロナ前には至らないものの安定した収益を確保しているという。

 「黒糖屋」を運営する大洋堂時計店の荒垣拓未常務は「変化に対応して方向転換できたことがよかった。ECサイトの人気で実店舗の利用者も増えた」と効果を実感する。

 よろずの金城氏は「好景気には見えなかった経営の問題点が、コロナによって顕在化する」と指摘。「われわれは専門家集団。豊富な情報に基づく助言が行えるので、早い相談が課題解決につながることを知ってほしい」と呼び掛けた。

(小波津智也)