【識者談話】王府育成の芸能認める 琉球舞踊の人間国宝 宜保榮治郎氏(琉球舞踊保存会顧問)


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 国が琉球舞踊の「重要無形文化財保持者」、俗に言う「人間国宝」の認定に動き、やっと分かってくれたなと感慨深く思っている。その保持者として、志田房子さんと宮城幸子さんを答申したことも適切だと思う。沖縄の芸能界からはすでに複数の方が人間国宝に認定されているが、「地謡」が多かった。なぜ肝心の立方である舞踊の認定が遅れたかというと、それは舞踊家の層が厚く人選が難しかったことにあったと思われる。

 琉球舞踊は日本や諸外国の芸能とは全く違った歴史を持っている。それは「御冠船(うかんしん)」(琉球国王の戴冠式)のために行われる芸能として、琉球王府が育成した芸能であるということだ。単に娯楽として育成されたわけではないという、この歴史的背景は実に誇るべきことだ。

 私たち芸能研究者は、琉球舞踊のレベルが本土と比べてどうなのかということを常に気にしていた。ようやく本土復帰した直後、那覇市民会館で日本を代表する舞踊家・武原はん氏の舞踊を拝見する機会があった。そのとき、琉球古典舞踊も日本の古典舞踊と遜色ないと思った。

 このたび答申された宮城幸子さんは真境名佳子さんの高弟で、特に恵まれた容貌と才能で古典舞踊の名手として、一目置かれた方で、現在は国立劇場おきなわで若手舞踊家の指導に当たっている。志田房子さんは東京にお住まいだが、若い頃は「花風」の名手として一世を風靡(ふうび)した方で、特に雑踊の優れた方として現在も活躍しており、彼女の琉球舞踊界への影響は計り知れないものがある。

 日本を代表する舞踊として、沖縄の舞踊のすばらしさを世界に伝えていくことが、(琉球芸能に携わる者に)課せられた使命だと思う。これをきっかけに、続々後輩の認定が続くことを期待する。