廃止なら生活影響必至 ガソリン税軽減措置 期限迫る 県に危機感、延長訴えへ


社会
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 沖縄復帰特別措置法(復帰特措法)に基づき、沖縄に適用されている揮発油税・地方揮発油税(ガソリン税)の軽減措置が2022年5月で期限を迎える。ガソリン税軽減措置の廃止が決まると、消費者負担に直結する見通しで、離島県の沖縄はガソリン価格が全国で最も高い状況が続くとみられている。県は、本土とは違い、鉄軌道がないことから「ガソリン価格の高騰は県民生活や産業活動に影響が大きい」として、同措置の延長を国に強く主張する構えだ。

 同じく復帰特措法によって導入された「酒税」の軽減措置は将来的な廃止に向けた議論が浮上しており、県は復帰特措法自体が廃止される可能性もあるとして危機感を強めている。

 ガソリン税は製造者と輸入業者に課せられる間接税で、負担額はそのまま消費者に転嫁される。軽減措置によって、沖縄は本土より1リットル当たり7円安くなっているが、そのうち1・5円は輸送コストが本島よりも高い離島への補助に賄われている。そのため、全県的に1リットル当たり5・5円が軽減されている。ガソリン税軽減の適用額は過去5年間で44~48億円で推移する。

 ただ、15年に県内唯一の石油精製会社が撤退して以降、県内のガソリン価格は高止まりしている。軽減措置が適用されていても、17年度は1リットル当たり平均144・3円で、全国最高値を記録した。18年度には155円で4位、19年度は153・7円で4位、20年度は141・4円で7位と全国的にみても価格が高い水準が続いている。さらに、離島自治体は19年度の月別調査では、本島と比べて、1リットル当たり平均26・3円高い月もあるなどさらに厳しい状況だ。

 県によると、軽減措置がなくなるとガソリン価格は毎年全国最高値を記録することは確実で、経済波及効果約69・6億円(20年度試算)の損失が見込まれる。中でも運輸業は約8・5億円の損失と影響が大きい。

 6月に開かれた新たな沖縄振興計画を審議する県振興審議会で、産業振興部会長の金城克也県経営者協会会長は「復帰特措法で講じられている激変緩和措置は、沖縄振興特別措置法(沖振法)で位置付けてほしい」との要望もあった。

 県消費・くらし安全課の新垣雅寛課長は「ガソリンは県民生活や産業活動になくてはならないもので、酒税とは性格が違う。(沖縄の)構造的な不利性は解消されておらず、復帰特措法の趣旨に合致していると考えている」と述べ、国に延長を強く要望する考えだ。

 一方、新たな沖縄振興の在り方を議論する自民党本部の沖縄振興調査会ではガソリン税などについても議論が進められている。同会が月内にもまとめる提言の原案では修正可能性もあるものの「各種の税制措置は、沖縄の経済発展や不利性解消等において一定の役割を果たしてきている」などと評価している。自民党内で秋ごろまでには各種税制の方向性が示される見通しだ。 

(梅田正覚)


【用語】ガソリン税 揮発油税と地方揮発油税の総称。本土ではガソリン1リットル当たり53・8円負担しているが、沖縄は復帰特措法に基づき1リットル当たり7円安い46・8円を負担する。復帰前の米国民政府は離島も含めてガソリン価格の全県統一政策を実施していた。1972年の日本への復帰後は、統一価格政策がなくなり本島と離島の価格差が生じることから、県は復帰特措法に基づく軽減措置を原資に離島のガソリン輸送費を補助している。補助原資を差し引くと、本土と比べて1リットル当たり5・5円安くなっている。