ドローン+AIで「溺れる前にも」水難アラート 沖縄のビーチで世界初の実証実験


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ドローンと動画解析AIの技術を融合したビーチの安全管理システムのイメージ図

 「沖縄発で世界へ」。ドローンと人の動きを捉えて行動を認識する動画解析AIの技術を融合し、海上のパトロールや事故の発見・通報をドローンが自動で担うシステム開発が県内で進んでいる。世界初の技術を駆使し、水難事故の未然防止につなげる。計画するクリエイトジャパン(那覇市、佐多大社長)とアジラ(東京都、木村大介社長)は、緊急事態宣言解除後に県内で実証実験を予定しており、早ければ来年度の実用化を目指す。

那覇の「クリエイト」と東京の「アジラ」が開発

 開発を進めるクリエイトジャパンはドローンによる映像撮影や、操縦者向けの講習、資格認定などの事業に特化。アジラは「行動推定装置」などの特許を取得しており、人の姿勢などから行動を認識する行動認識AI技術を提供している。

 2社の得意分野を組み合わせたのが水難事故防止システムとなる。特定の海岸を対象に、カメラを搭載した空中ドローンが自動飛行で巡回。映像を管理室などのサーバーに送り、人が溺れるなど異常を検知すると、音・光のアラートやライフガードらが持つ端末に通知することができる。迅速な事故対応や溺れる前の段階で検知し、事故を未然に防ぐことも期待される。

 この独自システムに加え、救命胴衣などを投下する救助支援、水中の危険箇所の捜索支援でも既に実用化されているドローン技術を組み合わせることで、パトロールから発見・通報、救助、捜索といった一連の流れをドローンが支援できるという。ライフガードらによる現行の監視・救助をカバーする。

 個人情報やセキュリティーに関してはドローンが事故などで第三者の手に渡っても映像はサーバーに送られているため残らないという。サーバーに送られた映像もモザイクをかけた様に顔は判別できないようにし、処理するという。佐多さんは「実証実験を繰り返し、命を救うことにつなげたい」と語った。 
(仲村良太)
 

ビーチ実証実験、客が少ないコロナ禍逆手に

 水難事故を未然に防ぐ最新技術を生かしたビーチの安全管理システムの実証実験は、新型コロナウイルスの影響でビーチを訪れる人が激減した現状を有効活用し、コロナ後の沖縄観光回復を見据えた取り組みの一環にも位置付けられる。

 2020年の県内の水難事故は85件、水難者は103人でいずれも全国最多だった。死者・行方不明者は43人だった。同じ年の県内の交通事故は2808件で死亡事故は22件、死者は22人。水難事故の死者・行方不明者は交通死亡者の2倍近くになった。過去10年でも県内では水難事故と交通事故の死者数は同水準の状況にある。

 実証実験では、ビーチなどで人が溺れた場合などを想定し、システムの作動状況を確認する。

 通常、観光シーズン最盛期の7~8月は観光客がビーチを埋め尽くすが、コロナ禍の今は少ない状況にある。クリエイトジャパンの佐多大社長、アジラの木村大介社長は「安全面に配慮できる」と語る。コロナ禍だからこその好機と受け止めている。