糸数「悔しいの一言」 成功率上がらず メダル逃す


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男子61キロ級 ジャークで159キロに成功した糸数陽一=東京国際フォーラム

 「なかなかオリンピックはうまくいかないな、と改めて感じました」。表彰台への一歩を踏み出すことは、またもかなわなかった。糸数陽一の順位はリオ五輪と同じ4位。しかし、全試技成功で日本記録を更新した5年前とは対照的に、表情は暗く沈んだ。「成功率が良くなかったのが悔やまれる。本当に悔しいの一言です」

 スナッチ1回目。自己ベストを5キロ下回る130キロだったが「リードしようと慌ててしまった」と尻もちを付いて失敗。その後は立て直し、スナッチ終了時点で3位とメダル圏内に付けた。しかしジャークは1本のみの成功にとどまり、カザフスタン選手に上回られた。減量の影響で試合中に全身の手足がつっていたというが「単に自分の実力不足」と言い訳を拒んだ。

 5年間、東京でのメダル獲得のみを目指して鍛錬を続けてきた。階級の体重区分が1キロ落ちて減量に苦心した。けがもした。練習時間を従来の半分にして質を上げるなど工夫を重ね、たどり着いた舞台だった。ふがいなさが先行するあまり涙もない。しかし、ぽつりぽつりと並べた言葉に悔しさがにじんだ。

 「試合前にいただいた応援は最高のプレゼントだった。返すことができなかった」「この状況での開催に感謝している。いい試技で恩返しをしたかった」

 30歳。今後については「自分の心と体と相談し、次の道を目指すのか、競技で次の目標を目指すのか考えたい」という。根っこにある「恩返しがしたい」という思いは変わらない。「やってきたことがゼロになる訳じゃない。違った形で恩返しができるように精進したい」。沖縄、日本の男子重量挙げを先頭で引っ張ってきたリフターは最後まで気丈で、謙虚だった。 

(長嶺真輝)