【記者解説】部活ハラスメント、教諭処分だけで解決しない 高2自殺


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 県立高校の男子生徒が自殺した問題で、沖縄県教育委員会は「精神的負担を与える言葉」を「体罰」と判断し、懲戒免職を下した。生徒の命が奪われるという重大事案に最も重い処分が言い渡されたが、これで全ての問題が解決されたわけではない。部活動の顧問らによる児童生徒へのハラスメントは後を絶たない。悲劇を繰り返さないためにも、実効性のある対策を早急に講じることが求められる。

 県教委学校人事課は、「県教育委員会懲戒処分の指針」の中の「体罰関係」の項目を処分の根拠とした。体罰を児童生徒への暴力や暴言と定義しており「体罰等により、児童生徒が重傷を負った場合は、免職または停職とする」としている。

 同課によると、部活動顧問だった元教諭は、同課の聞き取り調査や事実確認で、男子生徒を追い詰めたいくつかの言動を否定したという。しかし、男子生徒を叱責(しっせき)する様子を見ていた複数の部員の証言内容が一致していることから、「精神的負担を与える言葉を繰り返した」ことが自ら命を絶った原因であると判断した。

 第三者調査チームの報告書によると、元教諭の不適切な言動は過去にもあった。学校の管理職はもちろん、周囲の教員たちも生徒への体罰、ハラスメントを把握していたと考えられる。早い段階で適切に対応していれば命が失われることを防げた可能性がある。

 処分を受け、県教委の金城弘昌教育長は「詳細調査報告書の内容を真摯(しんし)に受け止め、部活動の在り方の見直しや、教育委員会の管理体制の改善に全力で取り組む」とコメントした。「再発防止に努める」というありふれた言葉よりも、管理職や教育委員会の責任を明らかにし、子どもたちに関わる全ての大人が人権意識を高く持てるような施策を進める必要がある。

 (嘉数陽)