第3戦からの2試合で合計1得点だった池原綾香が、後半に光を取り戻した。GKの足元を抜いてネットを揺らすと、次は鮮やかなループシュートで連続得点。後半だけで3点を決めた。しかし完敗で目標の決勝トーナメント進出はならず。ほぼフル出場で体を張り続けた池原は目を真っ赤にして「悔しい。自分がもっと背中で示さないといけなかった」と振り返った。
大会を通して「積極的にボールに絡んでいきたい」と語っていた池原。サイドからポストの位置に上がってパスを受け、フリーでシュートを放つなど工夫も見せた。だが、自身初の五輪はこれで幕を下ろした。「もっとできるのに、もっとできたのに…」。声を詰まらせ、涙をぬぐった。
2017年から武者修行で欧州へ。得点感覚を磨いたが、19年1月に試練が襲った。右足の前十字靱帯(じんたい)と半月板の損傷という大けがを負い「(五輪出場は)終わったなと思った」。だが、泣きはらしたのは2日間のみ。「東京五輪は人生で一度だけ」と過酷なリハビリに耐え、代表の座を射止めた。
たどり着いた夢の舞台。代表チームで右サイドが本職は池原のみ。「長いプレータイムでもいつも通りのプレーをしてくれる」と指揮官の信頼は厚く、左腕を振り続けた。悔いは残るが「けがで自分と向き合えた。無観客でイメージとは違ったけど、五輪はこれ以上ない最高の舞台だった」と笑みを浮かべた。
女子ハンドボーラーで五輪のコートに立ったのは県勢初。158センチとチーム一小柄な体で一線に立ち「沖縄の子たちが自分でもできると思うきっかけになれば」と期待する。30歳のベテラン。代表は「もう世代交代」と言うが「まだまだ課題は多い」と向上心は尽きない。欧州へ戻り、自分磨きを続ける。
(長嶺真輝)