ビーチ、観光地だけじゃない 北谷町全域で自然海岸など海辺の生き物調査


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 北谷町は本年度、町内全域で海辺の生き物調査をする。海岸の陸から海の中まで、どんな動植物がいるかをくまなく調べる。県内市町村単位での海の多様性調査はあまり例がないとされ、調査結果は報告書やパンフレットで広く伝えるほか、2023年度末に開館を予定している町の博物館に情報を蓄積していく。

大規模な生物調査が行われる北谷町の海辺を説明する町教委の藤彰矩さん。市街地に広い自然海岸も残る=北谷町砂辺

 「一般的な北谷のイメージとは違いますよね」。波打ち際から砂浜、その奥の後背林と連続した自然が残る砂辺の海岸で、町教委の藤彰矩(あきのり)さんは語る。沖にはサンゴ礁のリーフが見え、遮る人工物もない自然の海が広がる。

 北谷町は美浜など、埋め立て地に県内有数の商業地があり市街地の印象が強いが、砂辺など北部には自然海岸も残る。予備調査では人工海岸を含めサンゴや底生生物など希少種が生息していることも分かったという。豊かな海で採れた海産物は古くは縄文時代から人々の生活や交易を支え、同町伊平にある国指定史跡である伊礼原遺跡からは骨や貝の製品も出土している。

 調査は天候を見ながら8月に開始し、干潟を含めて海は30地点、植物は町全域を区画に分けて、どのような種が分布しているかを調べる。3月までに専門的な報告書のほか一般向けパンフレットと動画を作り、新型コロナウイルス感染症の状況を見ながら現地観察会なども計画している。

 藤さんは「どこに何がいるかが分かれば、自然を生かしたまちづくりも検討できる。まずこの自然を知ってほしいし、5年、10年とモニタリングして自然の変化も追いたい」と話した。

 伊礼原遺跡から出土した縄文時代の遺物などは、町役場に隣接した文化財展示室で見ることができる。平日の午前9時~午後5時。