廃棄される雄ヒナを飼育し製品に 産業化を目指し資金募集 ともや農場・協同商会


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肥育雄ヒナの製品化に成功し、表情を和ませる(左から)協同商会の比嘉正雄技術顧問、稲嶺盛徳会長、稲嶺盛久代表、ともや農場の具志堅真社長=7月17日、中城村屋宜の協同商会

 【中城】採卵鶏のふ化の選別段階で取り除かれる、いわゆる“抜き雄”を育て、産業化するプロジェクトが中城村で取り組まれている。産まれてすぐ失われていく雄ヒナをウインナーなどに製品化し、人間の命につなぐ画期的な取り組みで、13日からクラウドファンディング(CF)で資金を募る。飼育環境が整い次第、起業を目指すことにしており、養鶏農家などの所得向上と畜産産業の新たな振興にもつながると注目されている。

 プロジェクトを立ち上げたのは、養鶏農場を経営するともや農場(中城村北上原、具志堅真社長)と、協同商会(同村屋宜、稲嶺盛久代表取締役)。中核を支えているのは、大手の飼料会社で成分研究を積み重ねてきた同商会技術顧問の比嘉正雄さん(88)だ。

 比嘉さんは退職後も研究一筋。主原料のトウモロコシに泡盛粕などを使用した高カロリー、高タンパク質の飼料を開発した。これまでの常識を覆す配合飼料という。

 採卵鶏の雌雄の比率はほぼ50%ずつ。このため雄ヒナは利用価値がないとして産まれてすぐ処分されるなど、“抜き雄”と呼ばれる運命にあった。

 こうした実態に心を痛めた比嘉さんは、雄ヒナを有用飼育するための配合飼料を研究してきた。2年前から具志堅社長らの全面協力で、新配合飼料による飼育試験を行ってきた。その結果、飼育期間3カ月前後で、従来の廃鶏より1・2~2倍も体重が増加した。大手畜産加工品会社にウインナーやフランクフルトの試作製造を依頼した。

 念願の製品を手にした比嘉さんは「肉質は柔らかく光沢があり、味、食感に格別の深みがある。予想以上だ」と強調する。稲嶺代表取締役も「鶏特有の臭いもなくおいしい」と自信を深めている。県産素材を加味した製品も考案中だ。

 商品化のめどがついたことからCFを企画、10月15日まで資金を募る予定。具志堅社長は「新たな配合飼料の施設、飼育環境の整備に向け広く協力をお願いしたい。抜き雄を肥育して産業化できれば、養鶏農家の所得向上に結び付く。何よりも雄ヒナを大事な食用資源として新たな命を吹き込み、人間の命につなぐ挑戦でもある」と畜産振興の寄与に期待を膨らませている。

 CFはともや農場のホームページ、または問い合わせ(電話)090(1946)1247まで。(岸本健通信員)