「廊下から尿の臭いがする」胸騒ぎ…訪ねてみたら 特殊清掃士の男性が語る孤独死の現場


社会
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資格証を掲げる事件現場特殊清掃士の比嘉計さん=7月28日、浦添市宮城のoffice 双葉

 【浦添】孤独死や事故死の現場清掃や原状回復を行うのが、浦添市宮城に事務所を構える「office 双葉」。代表を務める比嘉計さん(32)は、以前に孤独死の遺体を搬送する仕事をしており、事件現場特殊清掃士や遺品整理士、古物商等の資格を取得した。昨年末に独立起業した。死後長時間が経過した場合、腐敗臭の除去や物件の原状回復を行うのは個人では非常に難しい。

 資格を持つ比嘉さんは県内で専用液剤を唯一使用しての脱臭・清掃作業や、故人の思い出の品を遺族に形見分けする遺品整理も行っている。

 現場では新型コロナウイルス感染症や遺体を媒介する害虫、菌で、危険な状態を安全に消毒し原状回復に努める。また認知症により「ごみ屋敷」化した家の清掃や、身寄りがなく遺体の引き取り手がいない場合もあるなど、社会状況についても説明した。

 ある日アパートを経営する比嘉さんの知人から電話があり「廊下から尿の臭いがする」との相談で「すぐ警察に電話して」とアドバイスしたが、知人は「最近も元気だったから大丈夫」と過小評価していることに胸騒ぎがしたという。現場に直行し、レスキュー隊を要請。電動カッターでドアを切断し、玄関口に倒れて意識を失っていた入居者の命を救ったこともあった。最近は遺品整理で難しい写真整理やネット銀行などのデジタル財産管理を危惧しており、終活セミナーも行っている。

 また、清掃現場で廃棄するエアコンを、社会福祉協議会を通じ必要とする人へ寄贈するのが目標と語り「現状は取り外しや保管など経費が掛かるため難しい。行政の支援があれば実現するので協力してほしい」と話す。

 また孤独死の第一発見者は後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)になる恐れがあるため「異変を感じたら相談してほしい」と呼び掛けた。問い合わせはオフィス双葉(電話)0120(438)636。
 (喜納高宏通信員)