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沖縄地方最低賃金審議会が12日、2021年度の県内最低賃金を時給で28円引き上げて820円とするよう沖縄労働局長へ答申した。コロナ禍が続く中で、19年度と並ぶ過去最大の引き上げ幅となったことは事業者に波紋を広げており、県内の中小企業経営者は「人件費が増え、経営がさらに厳しくなる」と苦境を訴える。一方で、時給820円になったとしても全国最下位は変わらず、労働者は「この額では生活ができない」とさらに大きな引き上げを望む声も上がる。
■増す人件費負担
沖縄地方最低賃金審議会が12日、2021年度の県内最低賃金を時給で28円引き上げて820円とするよう沖縄労働局長へ答申した。コロナ禍が続く中で、19年度と並ぶ過去最大の引き上げ幅となったことは事業者に波紋を広げており、県内の中小企業経営者は「人件費が増え、経営がさらに厳しくなる」と苦境を訴える。一方で、時給820円になったとしても全国最下位は変わらず、労働者は「この額では生活ができない」とさらに大きな引き上げを望む声も上がる。
県内のビル管理会社は、最低賃金の改定が実施されれば、全体で月に数百万円ほど人件費が増えると試算している。労災保険や社会保険の事業主負担も引き上げるため、実質的には1人当たりの人件費は1時間につき50円ほど上がるとしている。
新型コロナウイルスの影響で需要が落ち込むホテルの清掃業務などは大幅に減っている。予算は年度単位で組むため、賃金改定が適用される10月から半年間は値上げができないのも悩みの種だ。代表者は「今回は引き上げ額が大きく、せめて4月からの発効を求めたかった」と肩を落とした。
那覇市内で保育関係の事業所を経営する古堅宗二郎さん(40)も「サービスが低下しないように努力をしてきたが、限界が来ている」と訴える。収入が増えない中で人件費負担が増すことに不安を覚えており、「行政は補助金を上げるなどの対応をしてほしい」と求めた。
■コロナ禍の影響は
県中小企業家同友会の喜納朝勝代表理事は、全国一律で28円という目安を示した中央最低賃金審議会に対し、「沖縄は8割が第3次産業なので、生産性が低いのはやむを得ない面もある。地域性を考慮してほしい」と苦言を呈した。
コロナ禍の影響を受ける現状について「飲食業や観光業などは資本が弱いところもあり、雇用が失われる可能性がある」と指摘し、最低賃金の大幅な引き上げで事業の継続ができなくなることを危惧する。その上で、「従業員にも認識を共有してもらい、生産性を上げる取り組みが重要だ」と強調した。
これに対し、福祉職の40代男性は「上がったことはうれしいが、この額では食べていけない。千円以上にしてほしい」と訴える。
時給820円で1日8時間、月22日働く計算で、月給は14万4320円となる。連合沖縄の砂川安弘事務局長は「実際の手取り額は11万円程度だ。子どもを育てて困窮から抜け出せない水準だ。コロナ禍で厳しいと経営者側は言うが、もっと
困窮しているのは労働者だ」と指摘した。
(沖田有吾)