「渡名喜方言」辞典に 1万7000語、30年余かけ収集 出身の比嘉さん「島の宝」


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沖縄渡名喜方言辞典

 【渡名喜】30年以上の年月を経てまとめられた「沖縄渡名喜方言辞典」が、このほど発刊された。著者は渡名喜村出身の比嘉松吉さん(1908~2007年)。1079ページに及ぶ同書には約1万7千語が収められ、別冊で索引も付いている。

 渡名喜方言(トゥナチクトゥバ)の衰退を危惧した比嘉さんは、1983(昭和58)年ごろから渡名喜方言の収集作業に取り掛かった。しかし、純粋な島の方言を話してくれた古老が年々少なくなり、自身の体調不良などもあって執筆作業は中断と再開を何度も繰り返した。そんな中、長年にわたって元沖縄大学教授の高江洲頼子さん(63)が作成に携わり続け、学術的な価値付けを行い発刊にこぎ着けた。

 同村の多目的活動施設で2日、発刊を祝う式典が行われ、高江洲さんは「松吉先生とのご縁により、仕事をさせていただき感謝いっぱい。渡名喜の生活が見える辞典だ」と感慨深げに述べた。著者の遺志を引き継ぎ、発刊に尽力した親族の桃原又一さん(88)は「3千年の文化遺産を載せている辞典は私たちの宝物である」と思いを込めた。

出版を記念し開かれた沖縄渡名喜方言辞典の式典=2日、渡名喜村多目的活動施設

 発刊に向け先代から引き継ぎ、長期間協力したサン印刷代表の宮城剛さん(71)は「千ページを超える辞典なので出版会社としても自信となった」と述べ、発刊に当たっての苦労や感謝のあいさつに、会場は感無量の空気に包まれた。村民の一人は「方言を聞いてもすぐ忘れてしまうので、これからは自分で調べられてうれしい」と辞典を手に取り喜んだ。

 沖縄渡名喜方言辞典の問い合わせは、村教育委員会(電話)098(989)2015。

 (清水久乃通信員)