20代が会社運営に参加、奨学金の返還支援…コロナ下、沖縄企業の人材育成とは


社会
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奨学金返還支援制度を活用する仲本工業鉄構部の比嘉利彰主任(左)と同部の島袋ひかるさん=19日、沖縄市

 2022年春に卒業を予定する学生の採用活動が本格化する中で、県内企業は新型コロナ下でも求人に工夫を凝らしている。県内では若年者の離職率の高さが長年の課題だが、奨学金返済の経済負担を会社が肩代わりしたり、20代であっても会社運営の職責を経験させたりするなど、独自の人材育成制度で若い社員の定着率向上を図る企業側の動きがある。新入社員が力を発揮できる環境づくりは若手のやりがいだけでなく、IT化の促進など企業の成長にもつながっている。

若手社員が中心に会社の事業運営などを決めるウェルネス前田の運営委員会=2020年3月、浦添市(提供)

 新卒採用活動本格化

 建設業の仲本工業(沖縄市)は4月、新入社員と在職社員を対象に「奨学金返還支援制度」を始めた。若い社員の奨学金返済を会社が負担し、毎月の返済額を社員の給料に加算して支給する。初年度は在職社員6人と新入社員3人の計9人が対象となった。途中で退社したとしても、それまでに会社が負担した分の返却は不要という。

 仲本豊社長は「社会人になりたての頃は給料が少なく、奨学金返済の負担が大きい。会社が助成すれば、早く仕事も覚えてもらえる。結果的に、定着率の向上にもつながる」と制度創設の背景を説明した。

 同社は2015年から働きやすい職場づくりに本格的に取り組み始め、18年に県の人材育成企業に認証された。育児手当支給や海外社員旅行奨励のほか、同社に入社を希望する社員の家族・親族を対象に学費支援制度も取り入れている。

 仲本社長は「今後も社員の要望などを吸い上げて、より良い仕組みを実現したい」と意気込んだ。

 老人ホーム運営のウェルネス前田(浦添市)は2019年に、20代の若手社員を中心に構成する「運営委員会」を発足させ、会社の経営方針の立案や事業運営を担わせた。同委員会の取り組みにより新型コロナ下の面会がオンラインに切り替えられるなど社内のIT化が一気に進んだという。

 宮城さゆり社長は「運営委員会ができたことで、会社の雰囲気も変わった」と若手社員の活動を評価し、現在6人の運営委員で今年から採用や新人研修も担当する予定だ。宮城社長は「トップダウンではなく、若手にも会社運営にかかわってもらう。若い人を育てないと、会社も続かない。長い道のりだが、今後も人材育成の仕組みを整えていきたい」と話した。
 (呉俐君)