芸能従事者の9割「コロナで収入減」 活発な人ほど打撃


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沖縄イベント情報ネットワークの萩野一政理事長

 ウェブサイト「箆柄暦(ぴらつかこよみ)」の運営などを通して、沖縄のイベント情報の収集や整理、発信をしているNPO法人沖縄イベント情報ネットワークと、公益財団法人みらいファンド沖縄がこのほど、「コロナ禍における沖縄文化芸能の現状調査アンケート」を実施し、解析結果の一部を公表した。新型コロナウイルス感染症流行前から活発に公演をしていた芸能従事者ほど活動を制限されており、支援の必要性が垣間見られる。約9割が収入が減ったと答えており、経済的打撃の大きさが浮き彫りになった。

 アンケートは沖縄の文化芸能従事者の現状を調査し、文化芸能活動を続けるために必要な具体的支援の立ち上げにつなげることを目的に、6月10日から6月30日まで箆柄暦のサイト上で、箆柄暦の利用者らを対象に実施した。ミュージシャンなど文化芸能活動を実施しているパフォーマー(演者)、イベントを支えるスタッフ、ライブなどを開催するイベント施設の3部門に分けて回答を集めた。

 公表されたのは、県内で活動するパフォーマーが、自身のプロフィールやコロナ禍前後の経済状況、活動内容を問う14項目に答えた「パフォーマー編(県内)」のアンケート解析結果。アンケートには、118人が回答した。

 解析結果によると、回答者全体の89%が芸能活動の収入が減ったとし、収入が減ったと回答した人の95%が全収入の5割以上を失った。同回答者のうち、9割以上の収入を失った人は40%に上った。

 また、コロナ前の2019年に年間150回以上舞台に出演していた人は13%いたが、2020年は0%となるなど、活発な活動層が消滅している。

 ジャンル別の公演数の変化では、演劇や琉球古典芸能、民謡、ポップス、ジャズのジャンルで約80%から90%の減少が見られた。公演数減少が顕著だったジャンルはポップスをのぞき、いずれも芸能活動のみで生計を立てていたり、主な収入源としていたりする人が多数を占めた。

 支援制度については、文化芸術活動を支援する「文化系」の制度の利用割合が、家賃や運営資金などを援助する「事業系」の利用の約半数にとどまった。

 今後必要とする支援を複数回答でを尋ねたところ、「イベントや新規事業を企画・実施するための資金補助」など活動への補助が回答の42%(162件)、「(相談窓口の設置など)各種補助金申請のためのサポート」「契約不履行などに対抗できる組織的サポート」など活動基盤の整備は25%(97票)、「文化芸能活動に携わる人への一律給付金」は20%(78票)、コロナ対策は13%(48票)だった。

 自由回答欄では「沖縄は文化芸能立県だと思っていたが(略)芸能分野へのサポート立ち上げが遅く、他府県と比べてもその辺の思いは実は特に強くはないのかも」、「国も県も世の中飲食店しかないと思っているのかな?『芸能の島』はいつから『居酒屋の島』になったの」など、芸能の島・沖縄の行く末を案じる厳しい声が上がる。

 沖縄イベント情報ネットワークの萩野一政理事長は「芸能で生き、活躍している人が影響を受けている。(各ジャンルで)プロとして芸を高みに至らせた人ほど今後の活動がさらに鈍る恐れがあり、将来(芸能従事者を)目指す人が減少することも懸念される」と指摘する。「沖縄のブランドを背負っている芸能従事者の方を、緊急的に支援する仕組みが求められる。また、支援の対象を定める上で、ジャンルごとの価値にとらわれない、個人の活動量などに即した、客観的な指針も必要だ。解析結果を基に行政にも働きかけていきたい」と話した。

 アンケートの解析結果は、3部門合わせて、ウェブサイト「箆柄暦」で8月中の公開を予定している。
 (藤村謙吾)

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