沖縄科学技術大学院大学、開学10年へ 学長が「世界トップ」目指す新構想とは


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オンラインインタビューに答える沖縄科学技術大学院大学のピーター・グルース学長=19日

 11月で開学10年を迎える沖縄科学技術大学院大学(恩納村、OIST)のピーター・グルース学長が19日、琉球新報のインタビューに応じ、「世界トップクラスの研究機関になり、沖縄経済に貢献していくためには世界中から最も優秀な人たちを呼び込む必要がある」と述べ、研究規模の拡充を訴えた。内閣府はOISTの将来を議論する有識者検討会の最終報告を20日、取りまとめる。OISTの今後の在り方や沖縄振興にも影響を与える可能性もあり、注目が集まる。

 OISTは世界有数の学術出版社シュプリンガー・ネイチャーがまとめた、良質な論文の発表割合が高い研究機関の19年版で世界第9位となった。東京大(40位)を抑えて国内トップとなり、研究機関としての知名度も世界的に高まる。

 ただ、運営費が沖縄振興予算の中から約200億円が毎年支出されていることに対し、検討会からは外部資金の獲得に注力し、資金源の多様化を求める意見が上がっている。

 こうした中で、OISTは研究機関として発展するためにも、2030年には職員を現在の82人から150人体制に、研究員・学生を現在の約800人から約1800人に増やす目標を掲げている。グルース氏は「国際性と高いレベルの研究を保つという開学当初からのゴールを維持するためには安定的資金が必須だ」と強調。安定的な研究体制維持のためにも、予算に関して、これまでの枠組みを維持するよう求めた。将来的には収入の10%は外部資金で賄う目標を掲げた。

 取材に対して、グルース氏はOISTで生まれた発明や新技術を基にした街づくり「イノベーション・ハブ構想」に言及。現キャンパスの北側に起業家支援施設や住居、科学アミューズメント施設などが集積する「イノベーション・パーク」を整備し、最終的には3千~4千人の居住を計画する。研究を基にした起業などを後押しする50億円規模のベンチャーファンドの設立も視野に入れる。

 グルース氏は「研究成果を経済的価値に転換するのも本学の役目だ。沖縄が、起業をしたいという人々にとって素晴らしい場所であることを世界中に知らしめたい」と語った。
 (梅田正覚)