【深掘り】「世界最高か失敗事例か」予算増額の道筋不透明 沖縄科学技術大学院大


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 世界最高水準の研究大学を目指して創設された沖縄科学技術大学院大学(OIST)が開学10年で岐路に立っている。OISTは他の国内大学と比べて潤沢な運営費の交付があったことで、世界的な研究者を引きつけ、高い研究パフォーマンスを示してきた。さらなる研究体制の強化を図るため、予算増額を求めるが、国の財政事情は厳しく実現は不透明だ。運営費は沖縄振興予算の一部として拠出されているため、沖縄振興への寄与が少ないとの不満も県議会の一部から上がっている。

 ピーター・グルース学長は4月、内閣府の検討会で「二つの道がある。世界最高水準の大学になり、それによって沖縄経済をプッシュする。もしくは単なる一地方大学となり、日本の失敗事例となってしまうかだ」と強調した。

 国の財政難から国立大学への運営交付金は年々減らされている。国は複数の学者が応募、獲得を競う「競争的資金」の拡大を実施したが、研究テーマが絞られるほか、事務作業に追われ、質の高い論文が減り続けている状況がある。

 OISTはこうした国内研究機関の状況とは異なる運営が続いてきた。1つの研究グループ当たりの予算は単純換算で2億円以上と潤沢な資金が振り分けられる。長期的な視点に立った研究が可能となり、世界的な競争力を保つ源泉となっている。グルース学長は「予算を削減もしくは現状維持にすると、トップの科学者は去って行くだろう」とも指摘した。

 検討会委員はOISTの研究成果を称賛し、研究体制拡充に賛同する。ただ「国の補助は国内総生産(GDP)や人口が減少している中で、無制限に広げられるわけではない」「日本のみならず世界から研究資金を集めて財務基盤をつくる必要がある」などと指摘も上がる。

 OISTの土地は恩納村が無償で貸与している。同村の長浜善巳村長は「一部の住民からは『OISTは何をやっているのかが見えない』との声は確かにある。だが、最近は沖縄に関わる研究も増えてきている。沖縄を劇的に変える潜在力を持った存在だ。県は予算面などでもっと関わってほしい」と語った。
 (梅田正覚)