【記者解説】「世界レベル」まだ遠く…沖縄科学技術大学院大学、地元の連携不足が課題


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄科学技術大学院大学(OIST)

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の将来を議論する国の検討会は、OIST側が求める研究規模拡充の必要性に賛同した一方、国からの補助金に依存しない財政構造構築や沖縄の政財界との関係強化を提言した。OISTは政府からの安定的な研究資金提供の維持と予算の増額を求めており、一定の後押しになった。ただ、研究を基にした発明で沖縄や日本の産業にインパクトを与える使命は達成できておらず、早期に目に見える成果を上げる必要がある。

 OIST側も予算面で優遇されていることや沖縄の政財界との連携不足、産業面での成果が出せていないことを意識しており、新たに産学連携のまちづくり「イノベーションハブ構想」を掲げた。現キャンパス北側に起業家支援施設や住居、科学アミューズメント施設などを整備する壮大な構想だ。数千億円に上るとみられる整備費を民間から集めるとするが、まだ予算規模や整備時期などは決まっていない。

 また、沖縄振興予算として運営費などが拠出されているのにもかかわらず、報告書では「OISTと沖縄の関係は十分に密接とは言えない」などと矛盾に満ちた記載があった。そもそも検討会委員には1人も県関係者がおらず、OISTと沖縄の政財界との距離感を表している。

 玉城デニー知事はOISTの発展促進県民会議の会長を務めるが、恩納村やOIST関係者からは「県の関わる姿勢は消極的」との声も上がる。県はOISTとの産学連携を意識した新たな税制「沖縄イノベーション特区」の創設を国へ要望するが、玉城知事の後押しや機運の盛り上げは弱く実現性は不透明だ。県は、沖縄を劇的に変化させる潜在力を持つOISTとの距離を縮め、具体的な連携の方策を打ち出す必要がある。(梅田正覚)