「生きて、平和な未来つないで」対馬丸記念館、若手学芸員が子どもたちに伝えたいこと 


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「子どもたちに分かりやすく歴史を伝えたい」と語る学芸員の外間功一さん(右)と堀切香鈴さん=20日、那覇市若狭の対馬丸記念館

 那覇市若狭の対馬丸記念館では、外間功一さん(25)と堀切香鈴さん(23)の若手学芸員2人が1944年の対馬丸事件を伝える館内展示や平和学習を支えている。コロナ禍で来館者数が例年より8割減少する中、「今ある命を生き、平和な未来をつないでほしい」というメッセージを伝えようと、生存者の思いを継ぎ、後世へ歴史を伝える方法を模索している。

 県出身の2人は、大学在学中にそれぞれ学芸員資格を取得。外間さんは昨年8月、堀切さんは今年5月半ばから記念館の学芸員を務める。普段は館内展示や資料まとめのほか、学校で子どもたちに対馬丸事件を伝える出張講座などに携わる。外間さんは「淡々とせず、分かりやすく伝えたい」と、生存者数の割合をクラスの人数に置き換えて紹介したり、積極的に質問を投げ掛けて子どもたちの考えを引き出したりするなど、参加型の学習を取り入れる。一方で、経営面には難しさも。平和学習などで使用するDVDやパネル教材はこれまで無料で貸し出しており、新たな収入源とするにはハードルが高いという。クラウドファンディングやVR(仮想現実)での館内紹介を検討するなど、手探りな部分も多い中で、現在はデジタル教材の制作を進めている。

 対馬丸記念館は全国的にも珍しい子どもの戦争被害をテーマとする。2人は、日頃から共に運営に携わる生存者の体験や思いに触れてきた。堀切さんは「義務としてではなく、自分の人生を考える上で、戦争の歴史を知ることは大切だ。より多くの人に対馬丸事件を知ってもらえるよう取り組みたい」と話した。

 外間さんは「対馬丸事件を通して今の子どもたちに最も伝えたいのは『あなたには未来がある』ということ。時にはつらいこともあるが、生きて、平和な未来をつないでほしい」と力を込めた。

 (吉田早希)