【記者解説】強い「河野色」沖縄振興基本方向…「性の知識」「教育資源に米軍」


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内閣府(資料写真)

 内閣府が示した、新たな沖縄振興策の「基本方向」は、現行制度の大枠を継承しつつ、エビデンス(根拠)を重視する河野太郎沖縄担当相の姿勢も強く反映された中身となった。

 利用率の低い特区制度の見直しに言及し「指標に基づいた施策効果の検証」を求めた。県の自主性を担保する上で懸案だった「一括交付金制度」は継続方針を示したが、「有効活用に留意」とくぎを刺している。

 政策課題の筆頭には、「子どもの貧困」「教育」を挙げている。河野氏は会見で「これらの問題を解決することが沖縄の発展のベースになる」と重ねて強調し、人材育成や貧困問題に注力する姿勢を示した。

 ただ、子どもの貧困の問題に関連して「避妊を含めた性の知識」の必要性を示したほか、米軍基地を「教育資源」と位置づけた。いずれも、河野氏が5月の本紙取材などで発言し、議論を呼んだ持論だ。「河野カラー」をにじませた形だが、県民の認識とのずれも大きい。

 「基本方向」は、来年で日本復帰から半世紀という大きな節目を迎える沖縄振興計画の「骨子」となる。次代の道筋を示す方針だが、策定のプロセスに県の存在感は希薄だった。

 現行法がつくられた2012年には、県知事を交えた「沖縄政策協議会」が複数回開かれ、「県の意向」を反映しやすい環境が整っていた。一方で今回の策定では同協議会は開かれず、玉城デニー知事が協議に参加する機会を得られないまま議論は進んでいった。

 法案は来年の通常国会に提出され、衆参両院での審議を経て、来年3月末までに成立する見込みだ。沖縄の意見を反映させ、「真の自立」を促す法制度とするためにも、国に県側の意見を取り入れる姿勢が求められる。
 (安里洋輔)