沖縄公庫の存続「振興に必要」 内閣府の基本方向に再考求める声


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沖縄振興開発金融公庫

 内閣府が24日に発表した新たな沖縄振興策に関する検討の基本方向に、沖縄振興開発金融公庫の存続に関する明確な記述は見られなかった。県内経済界からは存続を求める声が相次ぎ、来年度以降の沖縄振興への影響を懸念した。

 政府は2006年、政府系金融機関を統合して日本政策金融公庫とすることを決め、沖縄公庫も12年度以降に統合するとしていた。

 しかし、県内の融資シェアの高さや民間では取り得ないリスクを引き受ける政策金融の必要性などから、存続を求める声が上がり、民主党政権時代の12年に21年度までの延長が決まった。

 24日発表の「基本方向」は、公庫についてコロナ禍で県内企業の資金繰りを支援した点を評価。一方で、行政改革推進法に基づき日本政策金融公庫に将来的に統合されることを指摘し、「地域経済の状況も踏まえつつ、沖縄における政策金融機能を担う体制を引き続き検討していく」と記載している。

 内閣府の担当者は「まさに字義通りの意味。結論は出ていないので引き続き検討していく」と説明した。

 これに対し、県商工会連合会の米須義明会長は「非常に残念だ」と落胆を隠さない。日本政策金融公庫との統合にも一定の理解を示すが、長期化するコロナ禍で沖縄公庫が果たす役割は一層大きくなっていると指摘する。米須会長は「存続の必要性や意義を訴えていきたい」と政府に再考を求めた。

 沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事も「大規模なホテル開発などは公庫がリスクを取って対応し、社会産業基盤の整備にも大きな役割を果たしてきた」と訴える。「入域観光客は2018年度に1千万人に達し、観光収入も7300億円を超えたが、県民所得は全国の7割ほどで振興は道半ばだ。子どもの貧困も深刻だ」と指摘。公庫の統合によるスピード感や効率性の低下を懸念し、「公庫は必要だ」と強調した。

 沖縄公庫を巡り、低金利での融資などから「民間金融機関を圧迫している」との指摘がある。ただ、県内地銀の関係者は「近年は公庫との間でコミュニケーションが取れていて、協調できていると思う」と話す。別の地銀関係者は「コロナ禍で沖縄公庫の存在感は増している。日本政策金融公庫と統合した場合、県内企業の支援に影響が出ないか」と懸念した。