PFAS汚染水放出 環境行政へ影響懸念 順守する事業者に悪い前例


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米軍の処理水放出を受け、宜野湾市下水道施設課が水を採取した地点=26日午前11時ごろ、市伊佐(市提供)

 【東京】米軍が処理したとして、普天間飛行場から公共下水道への放出を始めた有機フッ素化合物・PFAS(ピーファス)を含む汚染水は、毒性が指摘されることから産業廃棄物として焼却処理されるのが一般的だ。国内では、PFOSなどの排出基準がない中、米軍が放出を強行したことで、基準を守って廃棄物処理してきた事業者に対し「悪いモデルになる」といった環境行政全般への影響も懸念される。

 PFASの一種であるPFOS、PFOAは化学物質審査法に基づき、新たな製造や輸入、使用が禁じられる第1種特定化学物質に指定される。分解されにくく、環境中に出れば長期間残ることが特徴だ。

 環境省が策定したPFOSを含む廃棄物の処理に関する技術的留意事項は、焼却室中のガス温度が850度以上で2秒以上滞留させられるといった要件を設ける。

 高熱による処理で「分子レベルで壊す」ことが行われてきた。もともと自然界に存在せず、慎重な取り扱いが求められる物質だ。

 環境省や消防庁はPFOSを含む泡消火剤は廃棄物処理法に基づき処理するよう事業者に求めており、自衛隊を含む事業者はこの方針に沿って処理してきた。

 公的組織の米軍が国内の処理基準や行政機関の求めを無視して放出を強行したことで、他の事業者への影響や、排出基準をつくるとなった際の「前例」になるおそれもある。
 (知念征尚)