パラトライアスロンの秦由加子 沖縄で強化、手応え「表彰台目指したい」


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沖縄でのトレーニングでバイクをこぐ秦由加子=8月7日、豊見城市豊崎(チームゴーヤー提供)

 28日に行われるパラリンピックのトライアスロンPTS2クラスに千葉県出身の秦(はた)由加子(40)が出場する。昨年12月から8月中旬まで沖縄で生活し、県内でスクールを開くチームゴーヤーの千葉ちはるさん、智雄さんから直接指導を受けた。秦は「強くなったという実感がある」と充実した表情を見せる。「世界と戦ってどこまで行けるか楽しみ。表彰台を目指したい」と、出会った人や関係者に感謝の思いを込めてレースに挑む。

 秦は13歳の頃、右足に骨肉腫を発症して大腿(だいたい)部から下を切断した。競技は東京都のお台場海浜公園を発着点にスイム750メートル、バイク20キロ、ラン5キロで競う。秦のクラスには8人が出場予定で「得意のスイムをトップで上がり、バイク、ランで逃げ切りたい」とレース展開を描く。

 秦は2016年リオパラリンピックで6位。「本番3カ月前から切断部分が痛み、練習できる状態じゃなかった。水がたまっては注射器で抜くという具合で、完走できてほっとしたというのが本音だった」と振り返る。

秦 由加子

 秦にとって前回と大きく異なるのはバイクだ。19年末から右足の義足を付けず、片足のみでペダルをこぐスタイルへ変更した。義足を着脱する時間の短縮や軽量化が狙いだ。海水や汗で義足が外れそうになるリスクも回避できるが、体のバランスを崩さないために体幹を強化する必要があるという。タイム短縮のために自ら高いハードルを課した。

 毎年タイで合宿しているがコロナ禍で海外に行けず、国内拠点として冬は暖かい沖縄でという思いがあった。「千葉さんと直接会話をして、練習環境やコミュニケーションの取りやすさが自分に合っていた」と指導を依頼した。

 今年の正月には南部から北部まで約100キロの道のりをバイクで走破した。うるま市の海中道路の海でも泳いだ。ほぼ毎日指導を受け「体をぶらさずにバイクをこぎ、ランで走れるよう取り組んできた。体幹をうまく強化できた」と成長を実感している。指導した千葉ちはるさんは「来た時よりも筋力や体幹、スピードを含め、体つきが変わった。自信につながっているはずだ」と背中を押す。

 沖縄の印象を「地元愛が強くて、周りにいる人たちを大事にしてくれる人が多い」と語る。練習拠点にしていた奥武山のグラウンドで気軽に声を掛けてくれる人や、トライアスロン仲間らから元気をもらったという。「みんなに優しくしてもらい充実した沖縄生活だった。沖縄でトレーニングできて本当に良かった」。確かな手応えをつかみ、28日のレースで合宿の成果を出し切ることを誓う。
 (大城三太)