沖縄振興 民間投資を重視 辺野古推進 改めて支持 岸田文雄氏(美ら島議員連盟会長)に聞く


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沖縄政策について持論を語る岸田文雄前政調会長=6月、東京

 【東京】沖縄を支援する自民党議員でつくる「美ら島議員連盟」の会長を務める岸田文雄前政調会長が28日までに、琉球新報のインタビューに応じた。来年で日本復帰50年を迎える新たな沖縄振興について、子どもの貧困問題や脱炭素社会を引き続きの課題に挙げ、施策の方向性として「民間投資の導入」を重要視する姿勢をみせた。一方、東アジアの安全保障における沖縄の役割を重視する立場を示し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を改めて支持した。

 岸田氏は自民党総裁選(9月17日告示、同29日投開票)への出馬を表明した。「ポスト菅」候補の一人として沖縄政策への姿勢が注目される。

 岸田氏は2007年から08年まで沖縄担当相を務めた。昨年9月からは同議連で、初代に続き2度目の会長職に就任している。

 岸田氏は、先の大戦で原子爆弾が投下された地元・広島の経験を踏まえ、「沖縄には、戦争における大変厳しい過酷な歴史がある。平和への思いは広島にも通じるものがある」とした。

 一方で、県と国との対立が続く普天間飛行場の移設問題には、「今までの取り組みに政府の一員として取り組んできた経緯がある。この方針については、なかなか別案があるものではない」として、名護市辺野古への移設を進める政府方針を追認した。

 政府が辺野古移設を進める背景については、軍事面や経済面で台頭する中国を念頭に、「今後の中国の在りようが、緊張緩和の方向に進むということは見えてこない」との見解を示した。
その上で、「安全保障面の沖縄についても考えていかなければいけない」とした。

 復帰後に実施された沖縄振興の評価については、「特に社会インフラの整備については5次にわたる計画で進んだ部分がかなりあるが、乗り越えるべき課題もある」と指摘。引き続き克服すべき課題として「第3次産業に頼った産業構造」や「子どもの貧困」を挙げた。次代の沖縄振興に必要な要素に「民間の投資を沖縄にしっかり呼び込んでいく点も、しっかり加わっていかないといけない」との認識を示した。

【一問一答】産業構造、子の貧困課題

 ―沖縄は来年で日本復帰50年を迎える。これまでの振興を振り返って。

 「第1次から第3次の計画は本土との格差是正が基本だった。第4次に入って民間主導の『自立型経済の構築』という大きな目標を掲げ、第5次で県がより主体的に振興に関わる形になった。沖縄県の主体性が尊重される形で内容が深められてきた。社会インフラの整備についてはかなり進んだ。ただ、まだまだ乗り越えなければならない課題がある。例えば第3次産業に頼った産業構造、子どもの貧困。努力しなきゃいけないことはたくさんある」
 「党内で『単純延長はない』という意見が出たが、ある意味で沖縄への期待の表れだ。支援金や税制優遇など政府が取り組みを進めることはもちろんだが、民間投資の導入などもっと工夫があってもいい。『脱炭素』など社会全体として取り組まなければいけない課題もある。県民全体が大きな意識改革を行うべきで、県がしっかり旗を振ってほしい」

 ―米軍普天間飛行場の移設が進まない。

 「現状の計画を進めていく。この方針については、今のところ別の案はない。沖縄をめぐる安全保障環境の厳しさが今後、緩和される方向に行くことは考えにくい。安全保障面の沖縄についても考えていかなければいけない」

 ―「政治とカネ」の問題が絶えない。

 「政治の信頼回復のために説明責任をしっかり果たしていかなければならない。問題を起こした本人が離党したり辞職したりしても、政党としての責任は考えてみなければならない」

 ―広島の選挙買収事件における、政党資金の使途も不明だ。

 「裁判が結審したら書類は返ってくる。そうしたらきちんと説明してくださいと(二階)幹事長にも申し上げている」

 ―選挙も近い。沖縄とどのように向き合うか。

 「県連と党本部のやりとりが各地で問題になっている。最前線で汗をかいている地方議員、県連の意向は、党として重く受け止めてもらいたい。全ての問題で、喜んでもらう形で決着することは難しい時代だ。だからこそ、丁寧さや県民の皆さんとの意思疎通を図ることの大切さを痛感している」

 (聞き手 安里洋輔)