教え子・秦の健闘たたえる 沖縄で指導の千葉夫妻 3年後のパリに期待


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レース終了後に秦由加子から電話を受け、健闘をたたえる千葉智雄さん(左)と妻のちはるさん=28日、東京都内のホテル

 トライアスロン女子PTS2代表の、(40)=キヤノンマーケティングジャパン=を少しでも近くで応援したいと、沖縄で指導したチームゴーヤーコーチの千葉智雄さん(50)、妻のちはるさん(49)は会場近くのホテルでテレビ観戦した。1年近く、秦と濃密な時間を過ごした2人。「練習の成果を出せていた」と満足そうに口をそろえた。

 コロナ禍で毎年のタイ合宿ができなくなり、秦が昨年10月から温暖な沖縄を合宿地にしたことが出会いのきっかけ。チームゴーヤーを立ち上げてから20年余りがたったが、千葉夫妻にとって障がいを抱えた選手を指導するのは初めてだった。

 秦は13歳のころに骨肉腫を発症し、右足の大腿(だいたい)部から下を切断した。智雄さんは自ら義足を体験し、秦に適した練習や体の使い方を模索。「1歩目で転んじゃった」と義足を使って足の回転を早める難しさを実感した。メトロノームを使った練習を取り入れるなどして工夫を重ね、テンポを体に染みこませ、成長を促していった。

 「教えたことをすぐに吸収する。応援したくなる選手」と振り返るのはちはるさん。「今回メダルは取れなかったけど、今後何かを成し遂げてくれそう」と期待する。智雄さんも「3年後のパリ大会までまだまだ伸びる」と断言する。

 レース終了後、秦から電話で「ありがとうございました」と感謝を伝えられた2人。「スイムからすごく良かった」「この経験を次につなげてね」と健闘をたたえた。

 「由加子は『片足が無くても全然普通だよ』と話し、チームの大人から子どもまで障がいに対する考え方が変わった」と、出会いに感謝する智雄さん。自身も選手として五輪出場を夢見ていた。「生きてる間に日本で五輪、パラリンピックがあるのはこれが最後。関わらせてもらって本当に感謝してる」と万感の思いを語った。