サツマイモ基腐病、最短1日で病原菌を診断 被害拡大阻止に期待


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腐敗した塊根。左は外観、右は内部症状(農研機構提供)

 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県)がこのほど、サツマイモを腐らせる「サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)」の病原菌を最短1日で検出・同定する新たな技術を開発した。基腐病は2018年に沖縄本島南部の畑で国内で初めて確認され、19年には紅芋の被害が広がって県内の紅芋生産量が落ち込む事態を引き起こしていた。迅速かつ高精度診断が可能になることで、被害の拡大阻止や駆除方法の開発につながることが期待できる。

 基腐病の病原菌はカビの一種。生育中のサツマイモが感染すると地面との境の茎を黒く腐らせるほか、葉が黄色や赤に変色して枯死し、収穫できなくなる。発生した場合に感染を抑える効果的な農薬は見つかっていない。18年以降、沖縄のほか鹿児島県や宮崎県でも被害が出ており、県内では久米島や読谷村、糸満市など主要産地で被害報告が相次いでいる。

 国内には基腐病と症状が似た類縁菌の「乾腐(かんぷ)病」が分布しており、これまでは顕微鏡観察で基腐病かどうかを判別していた。この方法では菌の分離や人工培養が必要なため、特定まで2週間以上かかっていた。

 農研機構は病原菌を特異的に検出する「DNAプライマー」を用い、遺伝子を増幅して検出するPCR検査によって、検出までの期間を大幅に短縮できる手法を新たに開発した。症状が現れていないサツマイモからも基腐病菌を検出できたため、今後は種芋の検査技術も開発していく。

 農研機構は「基腐病発生の早期把握による徹底した初期防除や、まん延防止対策の実施に役立つ」とし、今後は各都道府県での利用と、技術の普及を進めていく方針を示した。(当銘千絵)