【識者談話】沖縄予算、振興策の成果「見える化」を(比嘉正茂・沖国大教授)


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比嘉正茂氏(沖国大教授)

 2022年度の沖縄関係予算の概算要求は、新型コロナウイルス感染症拡大で先行きの見通しが立てにくいことも影響し、現在の「沖縄振興体制」が大枠で維持された。一方、酒税の軽減措置は卒業に向けた記述があり、大きな変化はその点だろう。

 近年、概算要求時の総額から、本予算の策定までに増額することはなく、22年度の沖縄振興予算は10年ぶりに3千億円を下回る見込みだ。主な減少要因は予算の約4割を占める公共事業関係費の減額だった。

 予算総額が減額となる中で、「子どもの貧困対策」や「離島振興」のための予算が増額されている。予算全体に占める割合は小さいものの、目の前にある喫緊の課題であり、これらの予算が増額されたことは評価できる。

 産業振興では、新たに「域外競争力強化」の予算が計上された点にも注目したい。近年、地方創生のための戦略として、域外からお金を獲得する力、いわゆる「地域の稼ぐ力」が重視されている。産業の競争力強化を図り、県と市町村の「稼ぐ力」につながることを期待したい。

 沖縄振興予算は基地問題を背景とした政治的要因で増減が決まるとも言われるが、両者の因果関係を科学的に検証することは難しい。例えば一括交付金は、県と市町村からも予算増額を望む声が強いものの、概算要求ベースでも年々減額されており、22年度はピーク時に比べて半減している。国からは過去に「執行率が低い」と指摘されており、減額されても反論しづらい状況もある。

 沖縄振興予算と政治的要因との関係を指摘したいならば、振興策の成果を見える化していくことが重要だ。振興策の成果を示した上でも、なお予算が減らされるならば、政治的要因について指摘することができる。その意味でも行政の政策形成能力が鍵となる。県としては予算の総額に一喜一憂することなく、科学的根拠に基づいた振興策を着実に実施していくことが重要だ。
 (公共経済学)