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魅力を「見える化」し人気底上げへ 女子バスケWリーグ最年少理事・伊集南<ブレークスルー>


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Wリーグの新体制発表会見であいさつする伊集南=6月、東京都内(ⓒWリーグ)

 昨年、女子バスケットボールWリーグを引退した八重瀬町出身の伊集南(30)=糸満高―筑波大出=がバスケ人生の第2章へと足を踏み出した。6月、同リーグの理事に就任し、競技の普及・発展に向け、組織の意志決定に関わる。新体制となった理事会メンバーの中で、30歳の伊集は最年少だ。女子代表が東京五輪で男女を通じて史上初のメダルとなる銀を獲得した。世界の身長の高さに苦しめられてきたこれまでと比べると隔世の感のある日本女子バスケ界。「素晴らしい選手がたくさんいるということを『見える化』したい。選手やチームの魅力を発信していく」と人気の底上げを目指す。

 6月に新たな理事体制を発表したWリーグ。新会長には学生の頃にバスケに親しんだ映画監督の河瀬直美氏が就任し、伊集ら複数のOGが理事に就いた。同月21日に都内で開かれた発表会見で、伊集は「『どんな選手になったか』より『どんな人になれたか』が重要だと考えてきた。(引退後は)違う角度からバスケを見ながら還元していきたいと思い活動してきた。頼もしいと思っていただける行動を取っていきたい」とあいさつした。

■ワクワク感

 初めに理事就任の依頼を受けた時は「自分がですか?」と恐縮し、即決はできなかった。現役を退いた直後で30代に入ったばかり。「自分が理事という世界に入ってもいいんだろうか」と迷った。

現役時、デンソーでプレーした伊集南=2019年12月、沖縄市体育館

 引退後はリーグの試合解説を担っていた。目の前で国内トップの選手が躍動するリーグだが、その知名度は決して高いとは言えないと感じてきた。「選手のことをもっと知ってもらいたい」「どうやったらもっとリーグを盛り上げていけるんだろう」。魅力発信の方策を思案している自分がいた。3人制日本代表の経歴や解説での経験を生かしてほしいとの要望を受け「自分にも力になれることがある」と大役を引き受けた。

 リーグの発信力強化に向け「例えば自分が各チームに取材に行って、バスケのスタイルや選手の魅力を発信してもいい。選手自身にも、コート内外で魅力を持つ自覚を持ってもらいたい」と精力的な活動を見据える。直近の東京五輪にも触れ「代表の活躍には感謝しかない。ただ人気の継続が最も難しい。バスケはエンターテインメント性が高く競技者も多い。ワクワクしてもらえる環境をつくりたい」と意気込む。

 3人制の代表経験を生かし、日本協会の3×3委員会の委員も務める。東京五輪で初採用され、女子代表が決勝トーナメントまで進出した。3年後のパリ五輪でも実施が決まっている。「この競技をWリーグとどう共存させていくか。選手としての経験も踏まえ、より良い体制をつくりたい」と役割を見つめている。

■沖縄に貢献

 大学から県外で活動するが、引退後は「真っすぐ沖縄に戻って、沖縄のバスケに関わろうと思っていた」と言うほど、故郷への思いは強い。「今の自分があるのは絶対に沖縄のおかげ」と断言する。積み上げた経歴が評価され、より大きな舞台で手腕を振るうことになったが「沖縄で大会を開くなど、貢献できることはたくさんある。子どもたちにいろんな選択肢を与えたい」とにこやかに語る。

 県内は琉球ゴールデンキングスの活躍で男子の一流選手は身近だが「沖縄の女子選手にとってはトップリーグでプレーする現実味が薄い」とも感じる。「沖縄アリーナでWリーグの試合もできたら」と想像を膨らませる。Wリーグでは昨季、安間志織(北谷中―福岡・中村学園女子高―拓殖大出)がトヨタ自動車を初優勝に導き、プレーオフ最優秀選手賞を獲得。シャンソンに入団した知名祐里(西原高出)もリーグデビューを果たした。「どんどんいい選手が出てきてほしい」と後進の活躍に期待を寄せる。

(長嶺真輝)