菅首相退陣で沖縄経済界 那覇空港増設や名護東道路など評価 コロナ対策への不満も


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工期短縮を主導した那覇空港第2滑走路の供用開始セレモニーに出席し、あいさつする当時官房長官の菅義偉氏=2020年3月29日、那覇空港

 菅義偉首相が3日、自民党総裁選に出馬せず、退陣する意向を表明した。官房長官在任中も含めて、沖縄振興と深い関わりを持ってきた菅首相の突然の辞意表明に、県経済界にも衝撃が広がった。

 県経営者協会の金城克也会長は「突然で驚いている。新型コロナ対策は目に見えないウイルスとの闘いなので、かじ取りは誰でも苦労したと思う」とおもんぱかった。沖縄振興への尽力に感謝し「退任後も、沖縄の応援者として後押しをしてほしい」と話した。

 県ホテル協会の平良朝敬会長は、那覇空港第2滑走路事業の工期短縮や7月に開通した名護東道路など、沖縄振興への取り組みに熱心だったと評価した。「デジタル庁の発足を筆頭に、規制改革を含めてかなりの仕事をやってきた総理だ。しかし国民への説明が足りていないから、不満が出ている」と分析した。新型コロナ対策では、観光庁の予算で宿泊事業者の感染症対策に約68億円が確保されており「コロナ対策はこれからだったと思う。残念だ」と話した。

 JA沖縄中央会の大城勉会長は、次期首相に「新たな沖縄振興計画の策定や振興に必要な予算確保など、農業者が安心して営農活動を継続していけるよう引き続き支援をお願いしたい」と要望した。

 菅首相は国内の二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにすると宣言した。日本は地球温暖化対策に消極的というイメージがある中で、政権主導で脱炭素化を推し進めようとしていた。県中小企業家同友会環境委員会の玉栄章宏委員長は「国際社会からプレッシャーを掛けられた結果とはいえ、実質ゼロを目指すと宣言したことは大いに評価したい。脱炭素社会への取り組みという大きな方向性を後退させてはいけない」と話した。

 一方で、コロナ対策への不満もくすぶる。ある中小企業の代表は、サービス産業の比率が大きい沖縄はコロナ禍の長期化で全国的に見ても経済への打撃が大きくなっているとして、「誰が首相でも難しかったかもしれないが、期待していたリーダーシップは最後まで出てこなかった。中小企業の苦しさが伝わっているのか疑問だ」とため息混じりに話した。

 菅首相は、就任前から地方銀行の再編に意欲を示していたため、地銀が3行ある沖縄でも動向が注目されていた。県内金融機関の幹部は「改正金融機能強化法によって再編に向けた条件が整備されたので、政権が変わってもその流れは変わらないだろう」とした上で「県内地銀に圧力が掛かっていたわけではない。退陣しても影響は限定的ではないか」と推測する。