キングス戦チケット、沖縄市職員に無料配布…これって便宜供与? 公務員倫理規程、沖縄の実態は


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 公務員と利害関係がある業者との金銭や物品の受け取りを規制し、疑念や不信を招く行為を防止する「公務員倫理規程」。地方自治体は「努力義務」(国家公務員倫理法43条)とされているが、県内41市町村のうち倫理規程があるのは10市町村にとどまる。沖縄市は5月、プロスポーツの観戦チケットの提供を受け市職員に無料配布した。チケットを入手できないファンから不満が漏れた。識者は「住民の疑惑や不信を招くような行為を防止するため、地方自治体においても公務員倫理に関する規範が必要だ」と指摘している。

 県内で職員倫理規程があると答えたのは石垣市、豊見城市、うるま市、宮古島市、南風原町、久米島町、伊平屋村、国頭村、恩納村、宜野座村。県は1997年に県職員倫理規程を制定している。

 10市町村のうち、規程の内容を公表していると答えたのは6市町村。条例で内容を公開している石垣市などの例もあれば、内規として運用し、内容を公開していない自治体もあり、運用もまちまちだ。

 倫理規程で市町村が規制している行為は利害関係者から(1)金銭、物品、不動産をもらう(2)金銭を借りる(3)無償で物品や不動産の貸し付けを受ける(4)無料でサービスを受ける(5)供応接待を受けること―などとなっている。

 ■観戦チケット

 沖縄市は今年5月、同市を拠点とするプロバスケットボール琉球ゴールデンキングスから公式戦観戦チケットの提供を受けた。1枚数千円相当のチケットで、市は少なくとも50枚程度を私的観戦用として各部署の課長級以上の職員に無料配布した。

 一方、同じ5月に行われたキングスの試合のチケットが発売から約1時間で完売し、観戦できなかった知念海さん(20)=那覇市=は「市の職員が一般より優先されているようだ。今後も無料で観戦するのなら不公平で納得がいかない」と不満を抱く。

 キングスは今年3月に落成した市の施設「沖縄アリーナ」を拠点とし、チーム運営企業の傘下企業が同施設を指定管理している。

 市担当者は、キングス側に市職員への便宜供与の意図はなく、ホームタウンである沖縄市の職員に試合を見てもらい、行政やまちづくりに生かしてほしいという趣旨でのチケット提供だったと説明した。「倫理上も問題ない」とする。沖縄市に職員倫理規程はない。

 ■物差しなく

 一方、人事院の担当者は「国家公務員であれば、直接の利害関係者でない場合でも指定管理者の代理人とみなされる場合は、物品の受け取りが倫理規程違反になる可能性はある」とする。

 公務員倫理制度に詳しい大正大学の尾西雅博教授は「仮に沖縄市に国と同様の規程があれば『利害関係者に該当しない事業者から、社会通念上相当と認められる程度を超えて財産上の利益の供与を受けてはならない』という規程との関係が問題になる可能性がある」と指摘した。

 職員倫理規程の整備が県内で進まない中、公務員によるどのような行為が規制され、どのような行為は正当化されるのか。多くの自治体で明確な物差しがなく、便宜に当たるか分からない状態が続いている。
 (島袋良太)