宜野湾の虐待死2件、市と児相の情報共有不足を指摘 県部会が報告書提出


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 2015年11月と16年7月に宜野湾市で起きた乳児虐待死事件について、県社会福祉審議会児童福祉専門分科会審査部会(渡辺浩樹部会長)は9日、事例検証報告書を県に提出した。宜野湾市の組織体制の弱さや部署間の連携不足、市と児童相談所の情報共有が不十分だったことなどの問題点を指摘し、再発防止策として体制強化などを提言した。

 15年の事件は、生後2カ月の女児が当時28歳の母親から暴行を受け死亡し、母親は傷害致死の罪で有罪になった。16年の事件は、生後5カ月の男児が母親の交際相手に揺さぶられ、3週間後に低酸素脳症で死亡、交際相手は傷害致死の罪で有罪になった。15年の事件は市の健康増進課と児童家庭課、16年の事件は市と児童相談所が事件前から各家庭の支援に入っていた。

 報告書によると、15年の事件で逮捕された母親は軽度の知的障がいがあった。市の保健師や女性相談員は女児が生まれる前から支援に入り、母親が夫から身体的、経済的ドメスティックバイオレンス(DV)を受けていたことや望まない妊娠だったことを認識していた。事件発生の前日と約1カ月前にも訪問し、女児の体重減少を確認していた。

 報告書は「2回連続して体重減少を認めたにもかかわらず、その原因が判然としないまま経過観察となったことは危機意識が足りない対応」などと指摘。相談業務を嘱託、非常勤の職員が担い、危機意識を組織的に集約できる仕組みや体制が弱いことも問題点に挙げた。

 16年の事件は、当時21歳の母親が出産前に児童扶養手当の相談で市を訪れたことから、市が支援に入り、児童相談所にも情報提供した。報告書は、母親がDV歴のある交際相手に子どもを預けて夜間の仕事に就いた時点で「一時保護も含めた介入支援を検討すべきだった」と指摘した。

 2事件をまとめた再発防止策として、市町村職員のスキルアップや正職員化、児童相談所と市町村の適切な役割分担と情報共有などが提言された。

 同部会は2事件の裁判が終わった19年に検証作業を開始したが、同年に発生した小4年女児虐待死事件の検証のため作業を中断。今年3月に2事件の検証を再開していた。