【識者談話】沖縄から見た同時テロ 緊張根拠に基地存続 我部政明氏(国際政治学者)


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我部政明氏

 国際政治では東西冷戦が終結した1990年代、経済の重要性が議論されたが、米中枢同時テロで再び軍事力重視に戻った。米国の対テロ戦争はテロリストへの懲罰を目的にしていたが、イラク戦争以降は政権交代と民主化を目的にした介入となった。内部に受け皿がないところに、外国が無理やり民主主義を導入してもうまくいかないのは自明のことだ。

 在沖米軍基地を巡って90年代には少女乱暴事件があり、整理縮小の議論が起こった。2000年代の対テロ戦争に在沖米軍基地は使用されたが(地理的理由ではなく)既存の基地の一つとして利用したにすぎなかった。2010年代以降は、米国は対テロ戦争からの脱却を指向し、中国の台頭に注目するようになった。それを受けて、日米両政府は在沖米軍基地について、整理縮小から現状維持にシフトした。

 日本では安倍晋三政権以降、辺野古新基地建設などを進めてきた。新基地建設は沖縄の意見を聞かず、米国の意向を確実に実行することを示す機会であり、飛行場建設自体は何十年かかってもかまわない。米国にとって日米同盟の強化に反しない限り、日本の首相は誰でもよい。

 アジアでは冷戦終結以降、朝鮮半島などが平和的環境の実現に近づいたが、同時テロでそれが遠のいた。沖縄から見ると同時テロは「緊張がある限り、米軍は撤退しない」という沖縄返還以前からの基本方針を再確認させた事件だった。同時テロ以降の20年間、それは基地存続の根拠となり続けている。

 (国際政治学)