「見守りネット」沖縄で発足遅れ 高齢者や障がい者の消費者被害防止、自治体で差


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 悪質な業者に狙われやすい高齢者や障がい者の消費者被害を防ぐため、消費者安全法に基づいて自治体が設置する「消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)」の県内での発足が遅れている。2016年4月に施行された改正法で規定され、全国的に設置が進んでいるが、県内にはない。専門家は「地域でのネットワーク構築が被害の防止につながる」として、必要性を訴えている。

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 「悪質業者に一度狙われると、情報を共有され、繰り返し被害に遭ってしまう。本人がだまされていると気づかず、被害が埋もれやすい」。沖縄弁護士会の消費者問題対策特別委員会委員の寺田明弘弁護士は、高齢者の消費者トラブルの特徴を指摘する。被害額が大きくなる傾向もあり、県内で1億円もの被害に遭った人もいるという。

 地域で見守り活動をする関係者らが、トラブルの端緒をつかむことは多い。だが、個人情報保護が壁となって他の機関に相談できず、被害が深刻化するケースが問題となっている。

 こうした課題を解決しようと国が打ち出したのが、地域協議会だ。消費者安全法を改正して守秘義務規定を設け、協議会のメンバーが個人情報を共有できるようにして、地域で見守る体制整備を促している。協議会を置くかどうかは自治体の任意だが、国は人口5万人以上の全市町での設置を目標に掲げる。

 消費者庁のまとめによると、今年8月末時点で全国351自治体が設置。施行から5年が経過した現在、設置ゼロは沖縄を含め4県のみ。寺田弁護士は「旗振り役が見えにくく、運営する事務局はどこが担うか、個人情報の管理をどうするかが明確にならず、止まってしまっている」と分析する。

 行政や民間団体の連携など、協議会のメリットは大きい。寺田弁護士は、消費者問題は支援者らのつながりが十分にできていないとし「予防、救済のためには個々で対応するのではなく、地域みんなでネットワークをつくり、見守ることが重要だ」と述べた。