アフガン 沖縄から思い ホームステイ青年の無事願う 続く混乱「国際社会は関わりを」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
ホームステイを受け入れた時の様子を語り合う大城強さん(左)と斉藤伸哉さん(右)=14日、読谷村

 混乱が続くアフガニスタンに沖縄から思いを寄せる一家がいる。斉藤伸哉さん(55)=読谷村=と義父の大城強さん(83)=同=は2004年、国際協力機構(JICA)の青年招へい事業で沖縄を訪れたアフガニスタン人のアランさん(仮名)を、ホームステイ先として受け入れた。大城さんは沖縄戦と戦後の復興の体験を語り、青年を励ました。アフガニスタンで人道危機への懸念が強まる中、大城さんと斉藤さんは「無事でいてほしい」と安否を気遣い、日本や国際社会が関わり続けることを望んでいる。

 斉藤さんは埼玉県出身。沖縄出身の真衣子さん(49)と結婚して間もないころ、ホームステイ先募集の記事を見て応募した。それまでアフガニスタンという国や言葉、イスラム教を詳しく知らなかった。夫婦は料理を振る舞い、三線でアランさんをもてなした。アランさんは気さくな好青年で、カチャーシーを踊り打ち解けたという。

 「イスラム教は、元々は平和を大切にする宗教なんだ」「戦争のイメージが強いが、きれいな場所もたくさんあるんだよ」

 アランさんの言葉は今も斉藤さんの心に残る。斉藤さんは「イスラム教はテロや過激派など悪い側面しか伝えられない。受け入れてみて、地道なつながりが大事なんだと思った」と振り返った。

 大城さんはアランさんに沖縄戦の体験を語った。沖縄戦当時7歳だった大城さんは、一家10人で恩納岳に避難した。米兵の襲撃で家族は離散。大城さんは、兄と叔父と山中を逃げ続けた。幼いながらも「捕虜になったら殺される」と教え込まれ、最後まで捕まることを拒否した。

 大城さんは、英語が分かるアランさんに、斉藤さんを通じて自身の体験と平和への思いを伝えた。「戦争の背景に必ず大国がある。それを乗り越えるには住民の力が必要だ。ここから国が良くなっていくといいね」。大城さんらの励ましに、アランさんは笑顔でうなずいていたという。

 米国のバイデン政権は8月末、同時テロを機に始めたアフガニスタンへの軍事介入に終止符を打った。大城さんは「沖縄では米軍統治はうまくいったが、現代の戦争は複雑だ。軍事力では人を治められない、ということを米国は分かったのではないか」と語る。

 イスラム主義組織タリバンが暫定政権を樹立したアフガニスタンでは、極度の貧困や人権弾圧など人道危機が深刻さを増している。大城さんは「日本や国際社会は関わり続けてほしい」と訴える。

 斉藤さんはアフガニスタンの人々の、境遇の過酷さに痛みを感じている。「タリバンとわれわれの『平和』は違うのかもしれない。でも庶民レベルで、ご飯を食べて安心して寝たい、と思うのは同じだ」とおもんぱかった。

 (中村万里子)