ガマフヤー公開質問状 「これは全国の問題です」<おきなわ巡考記>


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藤原健氏

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の代表、具志堅隆松さんは、今日も返事が届くのを待っている。今、たけなわの自民党総裁選に立候補している4氏と各政党代表に「沖縄本島南部土砂採取計画に関する公開質問」を投げ掛け、その回答期限を24日に設定しているためだ。土砂に混じる住民、兵士の遺骨、骨片。血肉もしみ込んでいる。それを新基地建設のために海中深く埋めていいのか。人道上の問題として、「次の総理」になる可能性の高い人へ戦没者に成り代わっての問い掛けである。

岩の下から遺骨を掘り出し、黄色い布の上に集める具志堅隆松さん(左)=2020年11月、糸満市米須

 具志堅さんは、名護市辺野古の新基地建設の埋め立てに沖縄戦の激戦地だった本島南部の土砂を使用する計画の撤回を求めている。これまで沖縄県庁前と東京で同じ趣旨を訴えるハンガーストライキを行った。また、全国1743の県議会と市町村議会宛てに文書を送付し、土砂採取計画断念を国に求めるよう要請した。その結果、現在25の地方議会で要請に応えた意見書が採択されている。

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 「沖縄で進められている辺野古新基地建設の海域埋め立てのため、沖縄防衛局は土砂を沖縄本島南部から採取を計画しています。南部地域は去る沖縄戦で多くの将兵・住民が戦火に倒れ、未だに遺骨も埋もれている地域です。現に私たちボランティアが遺骨を発掘していた最中の沖縄戦跡国定公園内の遺骨発見現場も採石場の予定地となってしまいました」

 「国のために尽くした犠牲者の骨や血のしみ込んだ土砂を埋め立てに使うなどあってはならないことです。戦没者への冒涜(ぼうとく)です。ご遺族に説明のつくことではありません。なぜなら戦後に戦没者のご遺族の元に遺骨の代わりに届いた『御霊石』は戦没地の土砂と言われています。その『御霊石』を埋め立てに使うのは、国が先に行った遺族に対する慰霊行為を自ら否定することです」

 「南部地域の戦没者遺骨の特徴は、砲撃などによる粉砕骨が多く、さらに76年の歳月の経過で風化が進み、採取不可能な小さな骨は土と化しているのが現状です」

 「今回の『埋め立て用土砂採取計画』の撤回要請は、基地の建設に賛成か反対かではなく、単に人道上の問題です。沖縄戦で亡くなった7万7458名の日本兵は全国から沖縄に派兵された青年たちです。このことは沖縄だけの問題ではありません。全国の問題です。ぜひとも戦没者の救済とご遺族の心情に沿った対応を希望します」

 ここで強調しているように、この問題は、新基地建設の賛否以前の姿勢を問うことなのだ。この国が戦没者にどのように向き合っているか。歴史的な問い掛けでもあり、わずかとはいえ、米兵の遺骨も混じっている可能性を排除できない以上、国際問題でもある。

 戦争とは究極の国策である。であればこそ、その中で倒れた人々に対しては、遺骨になって以後も国が責任を持つべきものであろう。戦没者への尊崇の念を力説するのであれば、米軍の新基地建設のために戦没者の遺骨の混じる土砂を投じる行為が、いかにその尊厳を傷つけ、遺族の心情を逆なですることになるか。重く、深く思いを致すべきではないか。

 遺骨問題は質問状にある通り、「日本全体の問題」であり、「私たちの問題」である。それを「沖縄の問題」、「あなたたちの問題」として軽視し、シランフーナー(知らんぷり)することは人として取るべき態度ではない。事態は切迫している。どんな回答が寄せられるか。私も待つ。

 (元毎日新聞大阪本社編集局長、那覇市在住)(随時掲載)