【深掘り】沖縄種苗保護条例の制定方針の背景とは


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 全国各地で種子法に代わる条例の制定が進む中、玉城デニー知事は主要品種や県独自の在来種などの種苗を保護する条例を、年内に制定する意向を示した。

 県は昨年9月、農林水産部内に「県農産物等種子安定供給対策ワーキング会議」を設置し、条例の必要性などを検証してきた。12月に農業団体や市町村農業委員会など106の関係機関を対象にアンケートを実施したところ、多数が県独自の種苗条例の必要性を指摘したという。

 県の担当者によると、種苗の自家増殖を重ねることで品質が退化したり、ウイルスが入り種苗が劣化したりする品種もあるという。条例制定により、県の責任下で種苗の品質を維持管理すると明確化することで、生産農家に安定的に良質な種苗を供給することができるようになるほか、島野菜など県在来種の消失を防げるようになるという。

 JA沖縄中央会の大城勉会長は「県が品種改良や普及推進について予算措置を行えるよう、県の役割を入れた条例で検討していると聞いている」とし、「農家に新たな負担が生じないよう、本県の農業振興につながるものにしてもらいたい」とコメントした。

 種苗法などについて考える非営利ネットワーク「OKシードプロジェクト」の印鑰(いんやく)智哉事務局長は、全国的に広がる種子条例の多くが評価できるとする一方で、一部の県では民間企業の競争をあおり、種子の価格高騰につながりかねない条例もあると指摘する。その上で「沖縄は在来種の宝庫だ。県にはこれらの財産と、県経済を支える農家の権利や生活も守る条例にしてもらいたい」と注文を付けた。