響け♪首里城ウクレレ 破損瓦と県産木で作成 思いを音色に替えて


社会
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首里城の破損瓦を使いウクレレを製作した大城欣哉さん(右端)。息子の祐稀さん(中央)と娘の瑞稀さんも一緒にデザインを考えた=16日、読谷村宇座

 読谷村宇座でウクレレ工房「プアメリア」を営む大城欣哉さん(49)がこのほど、首里城の破損瓦と県産木を使ったオリジナルウクレレ2本を完成させた。瓦を使ったウクレレは世界的にも珍しい。那覇市首里出身で、祖父母も首里当蔵町に住んでいたことから、幼少期は当時の琉球大学キャンパスだった首里城周辺が「遊び場だった」と話す。2019年の火災に胸を痛め、何かできないかと考え「首里城への思いを音色に替えて届けられる」ウクレレの製作を思いついたという。

 ウクレレとの出合いは小学生の頃で、実際に楽器を始めたのは25歳を過ぎてから。自動車整備工として働きながら独学で練習したが「なかなか上達しなかった」と苦笑いする。

 ただ、心を癒やす優しい音色に魅了され、楽器そのものを作りたいと思うように。13年に仕事を辞め、一念発起してウクレレを製作販売する工房を開設、オリジナルブランド「shuli ukulele(シュリ・ウクレレ)」も立ち上げた。

県から譲り受けた首里城の破損瓦

 沖縄に広く分布する広葉樹は一般的にウクレレ材に向かないが、独自性を生かすため、あえて調整が難しいリュウキュウマツなどの県産木材を使用することにこだわる。ボディーを琉球藍で染め、沖縄の海や空を思わせる美しいブルーに仕立てた作品は、19年度の優良県産品にも選ばれた。

 今回、県から譲り受けた破損瓦を使って製作したウクレレには、沖縄を代表する木材で、首里城正殿の象徴部分にも使われたオキナワウラジロガシとイヌマキ(チャーギ)を選んだ。「首里城の音色を奏でたい」との思いから、ブリッジやサドル、フレットボードなど音を生み出すパーツには、瓦を使うよう工夫した。「実は御庭(ウナー)をイメージして、ネックの裏側にもこっそり瓦を施したんですよ」とちゃめっ気たっぷりに笑う。

 火災を通して、改めて首里城が多くの県民にとって心のよりどころだったことに気づかされたという。「その思いはきっと、世界に点在するウチナーンチュも同じだと思う」とし、「機会があれば県出身ミュージシャンに世界のウチナーンチュ大会でウクレレを弾いてもらい、『首里城の音色』を届けてもらいたい」と述べた。

(当銘千絵)