酒提供店の認証付き再開…期待の一方「メリット乏しい」、深夜営業「野放し」に


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新型コロナ感染防止対策を実施する飲食店に配布される、県の認証ステッカー=27日、那覇市前島(画像を一部加工しています)

 政府が9月末で緊急事態宣言を解除する方針を固めたことで、10月1日から県内の飲食店で酒類の提供が認められる見通しとなった。営業時間などの制限は残るものの、4カ月以上続いた酒類提供の全面自粛の解除に、多くの飲食店や卸事業者は需要回復に期待を寄せる。一方で「(感染防止対策店舗として)認証を受けるメリットが少ない」という指摘も上がった。

 4月1日から休業を続けてきた那覇市久米のバーラウンジ「櫻家(さくらや)」は、10月1日に半年ぶりに営業を再開する予定だ。休業期間中はリフォームを進め、7月には感染防止対策がとられている店舗として県の認証を取得した。

 オーナーの親富祖祐さんは「人生で一番長い休みだった。やっと店を開けられる」と喜ぶ。ただ、企業が社員に対して飲み会の自粛呼び掛けなどを続ける可能性もあるため、再開後も客足はすぐには戻らないと見ている。「リハビリから始めて、徐々に売り上げを回復していく」と話した。

 飲食店やホテルなどに食材を提供する卸売業者は、休業・時短要請中も協力金の対象にならず、苦境が続いた。「宣言が解除されれば、再開する飲食店も増える。売り込みを強化するなどして備えたい」(食肉卸売業者)と期待が広がる。

 酒類卸売の南島酒販(西原町)では27日、業務用の注文が先週と比べて微増した。同社の大岩健太郎社長は経済活動が再開に向かうのを歓迎する一方、「感染の収束と拡大を繰り返してきたので、油断はできない。稼ぎ時の12月に楽しく飲んでもらえるようになってほしい」と望んだ。

 緊急事態宣言が解除され、まん延防止等重点措置にも移行せず、県の独自措置となった場合、酒類提供は認証店で午後8時まで、認証店以外は午後7時までとされる。本島南部の認証取得店舗の経営者は「1時間しか違わないのなら、コストを掛けて認証取得の対策をするメリットは乏しい」とこぼす。また、これまでは協力要請に従わない店舗に対して新型コロナ特措法に基づいて過料を科すことができたが、県の独自措置に移行すると、深夜まで営業する店舗などに過料を科す根拠がなくなる。「現状で要請を無視している店は、10月以降も時短に従わないだろう。正直者がばかを見る状態が解消されていない」と疑問を呈した。