【記者解説】沖縄知事の3年の成果と課題 記者はどう見た?


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3年間の県政運営を振り返り、引き続き山積した県政課題に取り組む考えを示す玉城デニー7知事=1日、県庁

 4日で就任3年を迎える玉城デニー知事は「誰一人取り残さない社会」の実現を掲げ、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の理念の下、さまざまな施策を推進してきた。知事が自らSDGsの推進を打ち出すことで、民間企業が社会課題に取り組む機運も醸成されてきた。

 一方、知事は1日の記者会見で、知事選で掲げた公約291件のすべてを取り組んだと強調したが、達成できた項目は限られる。総花的に施策を展開しているものの、子どもの貧困など、沖縄の深刻な問題について、玉城県政で打ち出した新機軸は少ない。子どもの貧困対策に取り組んできた民間からは、玉城県政の施策展開は前例踏襲で、対症療法的だとの指摘もある。

 家庭環境が厳しい子どもたちのケアを続ける30代の男性は、県行政に対して「現場が分かっていないし、どこか人ごとだ。(虐待などの対策は)予防的観点を制度や施策に反映していかない限り変わっていかないが、意見が届いていない」と指摘する。県庁の中で聞こえがいいメッセージを打ち出すだけではなく、草の根で活動を続ける人たちの意見を丁寧に聞き取る姿勢が改めて求められる。

 玉城県政が打ち出した公約は分野が広く、実現のために必要な政策的アプローチも多岐にわたるが、どの公約を優先しているのか知事の考えが見えにくいとの指摘も上がっている。

 新型コロナウイルス対策で施策展開が十分にできなかった面はあるものの、任期は残り1年と迫る。限られた時間の中で推進する政策を順序立て、人的資源を集中し、自身が掲げる「誰一人取り残さない社会」に近づけることができるのかが問われる。

 (池田哲平)