【深掘り】32軍壕の地形調査終了 検討委、調査加速を要求「早く公開の議論を」


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 沖縄県は9月22日、那覇市の首里城地下付近に広がる第32軍司令部壕の基礎調査の一環で、ドローンを使った周辺の地形調査を終えた。今回の基礎調査に続き、県は2022年度に詳細調査を実施し、公開と保存の優先場所を具体的に検討するとしている。県の第32軍司令部壕保存・公開検討委員会も壕の全容解明が重要との立場だが、着手と断念を繰り返した経緯があることから、県への不信感も根強い。技術分野の委員は「できる調査から早めに手を付けるべきだ。早く公開の議論がしたい」と調査スケジュールの前倒しを求める。

検討委「公開議論を」 過去に断念、なお不信感

 32軍壕を巡り焦点となるのが、第1坑道や第1・4坑口など未発掘区間の調査だ。県は未発掘区間の位置や状態を地表面から確認する電気探査や、ボーリングなどの詳細調査の実施を次年度に検討している。

 県検討委の委員で、地盤工学が専門の伊東孝琉球大教授は「調査の進捗(しんちょく)が遅い。早く保存と公開について具体的に議論をしたい。できる調査を早めにやってほしいし、それは県にも伝えている」と話した。

 坑道内の天井は崩れてきている状況に触れ「そのまま置いておくのか、手を加えて保存するのか、早く結論を出す必要がある」とし、調査の加速化が必要との認識を示した。

第32軍壕周辺の地形を調べるため、離陸するドローン=9月22日、那覇市首里大中町の中城御殿跡

公開範囲は「白紙」

 32軍壕は戦後、県などが試掘に着手しては断念する事態が繰り返された。

 2012年度には、県は専門家による調査で「現状のままの一般公開は不可能」と結論付けた。

 玉城デニー県政は、20年度、新たに第32軍司令部壕保存・公開検討委員会を立ち上げたが、ある委員は事前に県職員から「公開のレベルは白紙だ」と伝えられたと明かした。

 直近となる7月の3回目の検討委では、県から目標達成までの大まかな計画(ロードマップ)も明確に示されなかったことに、委員らから苦言や不信感も相次いだ。

歯がゆい議論

 委員の1人で、トンネル工学が専門の小泉淳早稲田大学名誉教授は「県の『目標イメージ』や『本気度』が明確に示されていないため、堂々巡りの議論になっている。議論を聞いていて歯がゆい」と吐露した。

 小泉氏は「県がどこまで本気で調査と保存・公開をしたいのか。目標や予算を示してくれれば、年度ごとに費用を平準化し、最終的に保存・公開までの道筋を伝えることもできる。その段取りを早急に議論したい」と求める。

 県の積極的な広報も必要だとし、「機運を盛り上げるには、情報発信が必要だ。市民から盛り上がれば予算を付けやすく、寄付金を集めることなども可能になる」と見る。

 32軍壕の保存・公開を巡る挫折の歴史と困難を乗り越えられるのか。県の本気度が問われる。

 (中村万里子)