島のため祈り65年…92歳神人が引退 住民や地域見守り、南城市・奥武区から感謝状


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中本進区長から感謝状を受け取る金城シゲさん(前列右)=9月22日、南城市玉城の奥武区公民館

 【南城】65年間にわたって村の神人(ムラクジングワ)として祭祀儀礼に携わってきた南城市玉城・奥武区出身の金城シゲさん(92)に、中本進奥武区長からこのほど、感謝状が贈られた。

 奥武島では昔からのしきたりで、玉城門中と大屋門中から村の神人が輩出され、毎年開催される祭祀(さいし)の拝みごとに参加。特に観音堂での祈願には欠かせない存在で、年12回も関ってきた。金城さんはこれまで南部、名護など7カ所の観音堂を訪れるなど多くの祭祀儀礼に参加してきたが昨年から足腰が衰え、歩くのも不自由を感じ、神人役を退任することにしたという。

 中本区長は60余年にわたる金城さんの功績を称えようと9月22日、公民館に招き「長年のお務めご苦労さま」と感謝状を手渡した。

 贈呈式には大屋門中の神人を今も務める嶺井弘子さん(78)も同席。神人としての誇りや思い出話などを語り合った。嶺井さんは「永年のお務めご苦労さまでした」と先輩の労をねぎらった。

 金城さんは「これまでの祭祀行事で印象に最も残っているのが、観音堂祭祀に参加する際に男性たちが頭にわらを1本巻いて集まってくる姿で今も忘れられない。島を守り住民の安寧のためにもっと務めを続けたいが体が思うようにきかず残念です」と語った。

 20代のころから、神人を務めてきた金城さんは、魚の行商の合間に祭祀行事に参加してきた。奥武橋が架かる以前は、区所有の渡船(伝馬船)で対岸を往来していた。1936年に南洋移民で出稼ぎに行った島出身の浄財や区民の力で念願の木造橋が完成した。離島苦からの解放もつかの間。翌年の台風で流失してしまった。

 3代目鉄橋が架橋されたころから金城さんは神人として工事の安全祈願にも関わった。その後3回にわたって架橋工事が進められ、その度に神人が中心となって安全祈願してきた。(知花幸栄通信員)