観光客でも移住者でもない「関係人口」獲得へ 沖縄の自治体が新たな取り組み 


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関係人口の獲得に向け、うるま市が実施した「ワーケーションモニターツアー」の参加者ら=2020年12月4日、うるま市

 観光客でも移住者でもない。その間に位置し、都市部に住みながら継続して地域に関わる人々を指す「関係人口」の獲得に向け、県内自治体で取り組みが始まっている。県は本年度、企業経営などを通じてさまざまなノウハウを持つ首都圏の人々を対象に、久米島町、多良間村、国頭村の3地域で、旅先に滞在しながら仕事する「ワーケーション」の事業を実施する。参加者には空き時間に、地域が抱える課題を住民と一緒に考えてもらう。新型コロナウイルスの影響で事業実施が遅れているが、来年1月ごろに3地域で受け入れを開始する予定だ。

県、うるま市 受け入れ事業

 関係人口は、首都圏への一極集中を解消するため提唱された概念だ。ボランティアや短期滞在などをきっかけとして、さまざまな形で地域に継続的に関わる人々を増やし、最終的には定住につなげる狙いがある。全国の自治体でもさまざまな事業を展開している。

 県が2021年度に実施するモニターツアー「沖縄しまっちんぐ実証事業」の総事業費は一括交付金を活用した約1500万円。参加者には渡航費などの経費は支払わず、体験型ツアーの参加費などの支出にとどめる。

 その代わり、ワーケーションの一環としてテレワークを認める。例えば午前中は各自の仕事をしてもらい、空いた午後に農作物の輸送コスト削減や空き家対策、海洋漂着ごみの問題などさまざまな地域課題に触れて考えてもらう。

 県地域・離島課の担当者は「すぐに地方移住はハードルが高い。地域とのつながりを徐々に深め、最終的に定住につながればいい。渡航費などを支払わないので地域に興味を持つ、本気度の高い人たちが集まるのを期待している」と語る。

 うるま市では既に20年度に、2回のモニターツアーを実施して計57人が参加した。島しょ地域の海と集落を五感で味わうプログラムなどを体験してもらった。

 事業は新型コロナ対策の地方創生臨時交付金約1250万円を活用して実施。コロナ禍で打撃を受けた市内宿泊業者への支援も兼ねて、参加者には渡航費や滞在費を支出した。コロナ禍で全日程を消化できなかったため、21年度も引き続き実施する。

 市産業政策課の玉那覇謙太主事は「行政は新しい取り組みをするのが苦手な面もある。行政課題について参加者からノウハウや学びがあった。今後も他地域と違いを際立たせたワーケーションを展開したい」と語った。
(梅田正覚)